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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【生きものらしい表現の在り方】

村田英克
 前回、私の日記で予告したサマースクール。これは館の集いや催しの年間予定から見ると小さな一つの部分ですが、たった2日間のプログラムに生命誌の全体が濃縮されて入っています。館の展示、毎号の季刊『生命誌』、研究館グッズ、ホームページなど、どれも生命誌を表現する活動の中で、媒体の特徴ごとに決まった役割を担う部分でありながらも、一つ一つが生命誌全体の写しになっている。何をやっても「おのずからそうなる」ということは、これも私たちがいつも考えている、生きものらしさの表現なのだと思います。多様性をみせる個々の細胞に受精卵から継承した個体としての同一性を含む多細胞体のような在り方です。
 ここで、TALKの河本先生のお話を思い浮かびました。「自ら内側に陥没するような有機的な形態」として、「個体発生は自らの内と外を区切り、体を折りたたんで次元の多重化を行って、次々に次元を張り出すことで自分自身の領域化を行っている・・・」。そんな風にもの作りをしなくちゃいけない。
 実際には、いろいろ制約があります。例えば、今こつこつやっている仕事の一つに、ホームページ上の研究館グッズページの刷新があります。この場合には、商品販売としての利便性や、現実の利用可能なインターネット技術などの制約がかかってくるけれども、システムとしてもあまり複雑にならずに、表現対象としての研究館グッズと表現媒体としてのホームページの入れ子構造としたい。守屋先生のリサーチで語られた「有限のリソースからダイナミクスとロバストネスの最適のバランスを達成している生命」から学んだ柔軟なシステムが作れないものでしょうか。
 生命誌は、生物学研究はもちろん、言葉や建築、数学や物理など、多様な分野に取材して、「生きていること」を知ろうとする物語りであり、そこから次を生み出す「場」としての知の蓄積を続けるしくみでもあります。とくにWEB上の生命誌について、私は、生命誌のはたらきに即した、生きものらしい構造を実現するようなシステムを作らなくてはいけないと思うのです。

 [ 村田英克 ]

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