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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【多様性の理解に向けてコツコツと】

坂東明日佳
 前回の日記では「複数の分野のレビューを読みながら、同じ性質のタンパク質でも体の中ではさまざまなはたらきを担うことを実感した」ところまでの近況報告でした。その後、ではどれほど多様なはたらきに関わることが今の研究から分かっているのかを把握しようと、各レビューからせっせと具体的な研究成果を拾い集めていました。
 その中で面白かったのは、皮膚や骨など、ある特定の器官に関する研究報告を集めた専門誌のレビューです。これらのレビューでとりあげられているタンパク質の情報は、今まで私が使用してきた一般的な教科書の内容とはずいぶんと異なります。例えば、分子生物学の教科書では上皮バリアのはたらきに重要とされているタンパク質が、レビューでは何と記載されているかというと、乳腺で断片化されたタンパク質がお乳に分泌されていることや、ヒトの腸上皮には侵入できる菌がマウスには感染しないのはタンパク質の構造のわずかな違いが原因ではないかなど、基礎生物学出身の私からすると実にマニアックなものばかり。「わたしたちの体ってなんて複雑で且つユニークなのだろう!」と改めて感心してしまいました。
 このように生きものの多様性を表現・理解するには、具体例があればあるほど、説得力が増すような気がします。BRHの展示でも例えば『生命誌の階段』『生命誌のお散歩』では、「進化の道のりでどのような多様性を生きものは獲得したのか?」という問いをじっくりと考えるための素材として、過去に季刊生命誌で取り上げたたくさんの研究記事が整理、マッピングされていました。
 私の研究のテーマもコンセプトとしては「ただ多様なのではなくて、共通のしくみがあってその中から多様性が生まれるところが面白いのだ」とBRHで毎日のように耳にしてきたフレーズです。でも自分なりのやり方で分子のはたらきを調べ提示するようになった今このフレーズを聴くと、「そうだよね。こんなことにもあんなことにも同じものが実際に使われているものね〜」と実感の度合いが違うのです。「多様性」って、コツコツと具体例を収集して整理するという表現方法が有効なテーマのひとつなのだなあと思うこの頃です。分子の数だけコツコツが続くことを想像すると、さすがにちょっと目眩がしそうになりますけれど・・・。

 [ 坂東明日佳 ]

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