展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【当たり前を考える】
今年の生命誌のテーマは「続く」です。これまで扱ってきたテーマは個体発生、生態系、文楽、システム論、ロバストネス、細胞分裂様式と実に多様ですが、どの研究も「生きている」がどういうことなのかを真剣に考え、過去から今に、そして未来に「続く」という当たり前のことに正面から向き合っています。個体発生が完了しなければ生きものは生まれず、そこに変化が起きなければ進化は起こらない。そもそも生きものは自らを区切り、個体の死によって世代として続いていく。これは前々回と前回のトークを編集しながら考えさせられたことです。当たり前のようなことばかりですが、当たり前の大切なことをきちんと考えていくのが生命誌。今、自分がここにいるということにしても、個体としては20数年しか続いていないけれど、祖先を遡れば、ホモ・サピエンスとして20万年、脊索動物として5億年、生きものとして38億年…というふうに、いくつもの階層で続いてきたと思うと、ちょっとすごいです。しかもそれぞれにゲノムと細胞、個体と社会、種と生態系…と、重なりあった関わり合いがあるのだから、「続く」から生きものを考えるのに、終わりはありません。 話を戻して、身近な例で考えると、人間として親から子への「続く」を支える基本は家族です。そこで育まれるのは、文化だけではなく、かけがえのない人間のつながりなのだと思います。そんなことを、先週収録したトークを編集しながら考えました。続きは、11月中旬に発行する季刊生命誌59号でお楽しみ下さい(いつもとちょっと違う体裁になる予定です)。記事を読んで、みなさんが思われた「続く」についてのご感想をいただけると嬉しいです。 | |
[ 今村朋子 ] |