展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【展示を終えて】
さて、SICPの仕事のモットーは、過去を振り返らず先へモリモリと仕事を進めることなのですが、次の仕事につなげるために、少しだけ今回の展示を振り返りたいと思います。前回の日記にもありましたが、「いのち愛づる姫」の登場人物をこの眼で見てみよう!という着想から、この特別展示は生まれました。まず、飼育が簡単な植物(主に藻類)を選りすぐり、生きたまま顕微鏡で観察できるようにしました。しかし、顕微鏡で観察するだけでは展示に物語がありません。そこで、床に植物の進化の道筋を描き、それを実感できるものにしました。ところが、実際に道筋をつくってみると、植物の進化ってわかっていないことが多いのです。陸上植物の祖先は藻類です。それがどのように上陸し、複雑な陸上植物の形態へと進化したのか(細胞分裂様式から陸上植物の進化を読み解く研究がとてもおもしろく、今回のリサーチで取り上げました。是非ご覧ください)。動物の進化については、ある程度詳しい物語を描けますが、植物について、断片的な研究成果を集結させて一つの物語として語ることができるのでしょうか。今回の特別展示ではそれを語るには不十分だったので、現在、植物の進化のイベントをゲノム、環境、表現型の3つの側面から整理して、次の仕事につなげようとしているところです。「なるほど、生きものってこうなのね!」と腑に落ちるものを作りたいと思いつつ、邁進しています。 P.S 8月のこと。特別展示にて展示ガイドの藤田さんにいただいたシダを、うっかり水のやり忘れで枯らしてしまい(地上部はすべて茶色になってしまった)、もうダメだと思ったのですが、地下茎のおかげで、3日後にはニョキニョキと緑の葉が土の中から出てきました。なるほど、地上部が乾燥しても、土の中は生きているんだ、植物の戦略やなあと実感しつつ、きちんと水やりは欠かさないようにと心に誓うのでした。 | |
[ 板橋涼子 ] |