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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【ドルフィンキックのようにしなやかに】

遠山真理
 ようやく秋らしい風が吹き出しましたが、今年の夏も暑かったですね。特に4年に一度のオリンピックということで、さらに熱くなってしまいました。一生懸命、最善を尽くそうとする選手の姿に感動したり、普段目にすることのないスポーツの面白さに触れてみたり、お祭り気分です。さまざまな競技がありますが、オリンピックを目指して青春を捧げた日々があっただけに(遠く及ばなかった上に10年以上前のことですが…)、競泳の動向は気になります。思い起こせば4年前のオリンピックでも競泳をネタに表現スタッフ日記(私の水かき)を書いていました。
 今大会も競泳をチェックしていたところ、ちょっとした違和感が。男子800メートルリレーで飛び込みの後、ほとんどの選手が水中に潜ってドルフィンキックをしていたのです。ドルフィンキックは両方そろえて、腰のあたりから太もも、膝、足首という順番に足を動かす方法です。「飛び込んだらできるだけ早くバタ足で浮き上がること!」と徹底的に練習させられてきただけに、カルチャーショックです。確かにドルフィンキックをしている選手は、水の中でも無駄のない流線型の形を保って、飛び込みのスピードを保ったまま無理な力をかけることなく水面に浮かび上がってくるように見えます。ドルフィン(イルカ)と言えばみなさんご存知の通りの哺乳類。人が目標とすべき泳ぎの見本が、左右に体をくねらす魚ではなくイルカにあるとすれば、その理由は骨格の違いかしらなどと、あれこれ考えてしまいます。バタフライという泳法もチョウチョという名前が付いていながら、ドルフィンキックを基本にしています。呼吸のために水面に体を浮き上がらせながら、その勢いを前方へ進む力に変えるあたりはまるでイルカのジャンプ。今思うと、飛び込み後にバタ足で水の抵抗に抗って浮き上がる方法は人の体を「機械」とみなしていたような気がします。「機械」ではなく、「生きもの」の真似をした方がしなやかで、自然の力をうまく利用できるとは、当たり前のようですが、当時は気づくことができませんでした。それが私の競泳選手としての限界だったのかもしれません…(笑)。
 前置きが長くなってしまいましたが、大好きな競泳の話なのでお許しを。オリンピック開催中だからと言って仕事をさぼっていた訳ではなく、この夏は年刊号の企画について頭を悩ませています。年刊号も今回で7冊目。せっかく生命誌研究館を離れて書店に並ぶのですから、生命誌を知っている人にも知らない人にも生命誌が作ろうとしている新しい統合知について考えられるものにしたいと、学問や自然観の歴史を調べています。今年の生命誌のテーマは「続く」。これも形に反映させたいと思いながらアイディアを膨らませています。完成予定は来年の4月、これからが勝負です。ドルフィンキックのようにしなやかに仕事を前へ進められたらいいのですが、あまり器用ではないので、きっと水面下ではバタ足になってしまいそうだなと思いながらパソコンに向かっています。

 [ 遠山真理 ]

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