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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【むずかしいから楽しい】

2017年9月1日

川名 沙羅

6月から生命誌研究館の1F展示ホールでは、初代館長の岡田節人先生のお仕事とお人柄を知る展示<節人先生と「いのちの響き」を>を開催しています。この展示の制作過程では先生が書かれたさまざまな言葉を読み直しました。今の私の中に常にあるのは、季刊誌50号の対談で節人先生が生命誌について語った「科学を言語化したものですが、それは作品と呼べるもので、決して啓蒙書や解説書じゃないですよ。」という言葉です。

私が取り組んでいる、生命誌の表現のひとつは「細胞」展の刷新です。細胞とは何か、研究によって何が明らかになってきているのか。さまざまな知見を集めながら、文章や構成を考えているうちに、解説のようなものを書いている自分に気づき「はっ!」とします。科学で見えてきたことを基盤にしながらも、来館者のみなさんの心に直接うったえかける作品にするのが私たちの仕事です。なんとむずかしいことだろうと悩む毎日ですが、悩んでばかりでは前に進めないので表現セクターのメンバーと制作会社の方々と話し合い、試行錯誤しながら、つくり上げているところです。

本日発行の季刊「生命誌」94号でインタビューさせていただいた、江口吾朗先生は大学生の時に出会ったイモリのレンズ再生を生涯の研究テーマとしてつらぬき60年以上続け、「これで満足」と思える答えにたどり着くことができたそうです。インタビューの際、先生がお話しを終えた瞬間、カメラマンの大西さんと、齊藤スタッフと一緒に3人で思わず拍手をしてしまうほど、先生の語りに圧倒されました。

私の探求の道のりはまだまだ険しく、どこまでも続く果てがないもののように感じますが、一歩一歩進んでいきます。いつの日か「満足!」と思える、境地にたどりつけると嬉しいのですが。生命誌の作品づくりはむずかしいからこそ、楽しい仕事だなと思います。

[ 川名 沙羅 ]

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