展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【シーラカンスがやってきた】
2017年8月15日
地球上にはさまざまな生きものがおり、それぞれの個性も興味深かいですが、生きもの同士で共通にもつ性質とそこから読み解く進化の道のりに想像を巡らせるのもまた醍醐味です。研究館の人気者、肺魚について考える時、その一番近い親戚として「シーラカンス」を考えずにはいられません。シーラカンスと肺魚を合わせた肉鰭類は、私たち四足動物を含むグループであり、四肢と相同な鰭をもっています。
肺魚は、胸鰭と腹鰭をそれぞれ左右1対もち、四足動物を思わせる体つきをしていますが、鰭のかたちはさまざまです。アフリカ肺魚のマーブルくんの鰭の悠々とした長さとオーストラリア肺魚のシンプルさや南米肺魚のミニマムさ。一体どんな生活に見合った形なのか、想像するのも楽しみです。
シーラカンスの対鰭はがっちりと逞しいですが、体つきからすると歩き出すのは難しそうです。さらに背中とお尻にも丈夫な肉鰭をもつので、おそらく住処である深海で安定して泳ぐのに役立っているのでしょう。頭を下に優雅に立ち泳ぎすることが知られています。彼ら肉鰭類は、四足動物に一番近いというものの、その後の4億年の水中への適応が個性を生んだのです。
この夏、肺魚とシーラカンスを一度に見られるまたとない機会が、生命誌研究館に巡ってきました。(公財)国際科学振興財団所蔵の本物のシーラカンスの標本を夏休み限定で展示しています。つくばから大事に抱えて連れてきましたので、ちょっとミニサイズですが本物です(残念ながら泳いではくれませんが)。8月の生命誌の日では、肺魚とシーラカンスについて大いに語り合いましょう。
オーストラリア肺魚のアボカドくんの隣にシーラカンスを並べたところ、アボカドくん、じーっと見つめて気にしている様子です。もしかしたら、可愛い後ろ姿を見て好きになってしまったのかもしれません。そんな肺魚たちの日常の仕草も見逃せません。夏の生命誌研究館には発見が待っています!
関連リンク
サイエンティストライブラリー http://brh.co.jp/s_library/interview/88/
反復配列から進化を追う、いつもエキサイトを求めて 10.シーラカンスがやってきた