展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【ナナフシの世代交代進行中】
2017年9月15日
ナナフシの水槽をリニューアルして3ヶ月が経過しました。新しい水槽に放たれたナナフシたちは、広くなった空間を上り下りしたり、天井にぶら下がって一休みしたりと思い思いに過ごしており、ひとまず移住は成功のもようです。「広くなってよかったね」とナナフシたちに話しかけたくなります。
しかし私たちの一番の心配は、果たして次の世代が生まれるのか? ということでした。ナナフシはチョウなどとは違い、卵を特定の場所に産み付ける習性はなく、ただ枝の上から地面に卵を落とすだけです。新しくする前の水槽は底に土の層があり、産み落とされた卵が土の上に落ちて自然と孵化していました。水槽の環境が孵化に適していたせいか、年に数回は水槽にあふれんばかりの大量の赤ちゃんナナフシが見られたのです。
一方、新しい水槽は清潔と美観を保つため、底の土をなくすことにしました。どうやって卵を孵化させるかを考えるにあたって、ナナフシ飼育に詳しい大阪自然史センターの西澤真樹子さんらにアドバイスをいただき、水槽の底に溜まった卵を定期的に取り出して別の水槽で孵化させるという試みを始めました。新しい環境でうまく卵が孵化してくれるだろうか? 実は来る日も来る日も卵が孵らず、このまま子孫が絶えてしまったらどうしようかと少し不安に思っていたところだったのです。しかしついに昨日、体長1センチほどの小さな赤ちゃんナナフシが水槽のフタにくっついているのを発見! まだ足に卵の殻を引っ掛けている、生まれたてほやほやの姿です(写真)。飛び上がって早速ノイバラのエサを入れると、少しずつ食べてくれました。そして今日はさらに5匹ほどの赤ちゃんが孵化しました。
ひとまず次世代が生まれてくれて安心ですが、まだ油断はできません。赤ちゃんがもう少し大きくなるまで見守り続けなければ。展示用水槽の中に赤ちゃんコーナーをつくって展示することも考え中です。少しずつ入れ替わりながら続いていくナナフシたちに、ぜひ会いに来てください。
リニューアル世代第1号。体長1センチほど。右前足に卵の殻をくっつけて、よたよた歩いています。