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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【フィーリングがあう。】

2015年11月2日

村田英克

今、全国のミニシアターでドキュメンタリー映画「水と風と生きものと 中村桂子・生命誌を紡ぐ」を順次上映しています。生命誌出張展示や、ペーパークラフト、トランプなどオリジナルグッズの販売も、それぞれの劇場にあった形で一緒に行っています。各地で、映画館へ足を運んで下さった方々に映画鑑賞とあわせてこれらを楽しんで頂けているようで、そのことを映画館の方々も歓迎して下さり、私たちも喜んでいます。

どこでも生命誌を楽しめる出張生命誌展示と研究館グッズは、これまでも様々な形で、38億年の生きものの歴史に親しむ場を演出してきましたが、今回、そこに映画が加わったことで、各地の劇場で、さまざまな人と語りながら、改めて、生命誌を感じ、考える場の広がりを、日々実感しています。

図1をご覧下さい。近年の国内の映画館のスクリーン数の推移です。1990年代後半から増えています。しかしその過半数以上がシネマコンプレック型シアター(青色・シネコン)です。シネコンとは、1つの劇場に複数のスクリーンを持ち、一カ所に集約した映写室から各スクリーンへ効率よく番組を送出できる経済的な設備を備えた映画館で、大手映画会社から配給される娯楽映画の上映が多いようです。

図2は「映画館数」の推移です。映画館をいくつか色分けした中で水色のミニシアター(上から2つ目)に注目して下さい。10年間で全体が減少する中で微増しています。ミニシアターとは、大手映画会社の配給によらず、主に独自の裁量で番組編成を行う映画館で、こうした映画館は日本全国いろいろな地域にあり映画の多様性を支えています。
Wikipediaの「ミニシアター」を見ると、その例として、私たちの映画を上映してくれた名古屋のシネマスコーレの写真が載っています。

ミニシアターは、その街々の歴史を背負い、地域の文化拠点として営まれているのでそれぞれにポリシーがあり、映画館自体が強い個性を持っています。番組の選定は、劇場としてはそれ自体が経営判断ですから、抜き差しならぬものがあり、その作品が、どのようなお客さんに訴求できるのか、どれだけ宣伝努力されているか、どんな点に集客力があるのか、などを吟味されるわけです。もちろん番組編成をする支配人さんの好みもあって、「いいねえ、これ。やろうよ!」と二つ返事で決まる場合もあります。「フィーリングがあう」と云うのでしょうか。そんな時は、こちらもいっそう宣伝がんばらなくては! と思います。

高槻にある生命誌研究館では、ゲノムや細胞をモチーフにした新しい展示に取り組んでいます。最新の知見を深く掘り下げた上で、日常につながる生命誌の表現です。また研究を表現する先端的な発信を、季刊生命誌で行っています。このような研究館のコアの活動を続けながら、より広く社会に向けて、映画と出張展示とグッズの3つを組み合わせて、「人間も生きものであり、自然の一部である。」ことを皆さんと共有する場を、いろいろな地域で文化を大切にしている方々とつながりながら実現してゆきたいと思います。今後とも、どうぞよろしくお願いします。

11月28日(土)から、大阪、京都、神戸のミニシアターで、映画「水と風と生きものと」を順次公開します。映画館でお待ちしています。

映画「水と風と生きものと」劇場情報はこちら


第七藝術劇場(十三)

立誠シネマ(元・立誠小学校 南校舎3階/河原町)

神戸アートビレッジセンター(新開地)

[ 村田 英克 ]

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