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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【セ・ラ・ヴィ】

2015年7月1日

村田 英克

少し前「中村桂子のちょっと一言」で孔子の引用がありました。「吾、十有五にして学に志し」…うんぬん「五十にして天命を知る」…。私は、中学・高校時代に「学に志した」憶えはありませんが、実は、映画に取り憑かれたのはその頃でした。当時はVHSテープなどの録画再生機もなく、好きな映画は、くり返し何度も観て、カットも台詞も映画を全部憶えるという暴挙に出ました。二十代の多くの時間を映画館で過ごし、今の自分が形成されたように思います。今、思えば、あれは「学に志した」に等しいかも知れません。

大人になって、研究館で展示を拵えたり、季刊誌で研究や対談を編集していても、頭の中では、常に映像のイメージや展開、シーンとシーンの拮抗関係が「面白いか?」「いけてるか?」といつも映画をつくるようにして考えている節があります。そのイメージを図像と言葉の編集に置き換えて仕事をして参りました。そしていよいよBRH 二十周年(村田英克ほぼ五十周年)の節目に、映画をつくるという仕事を始めてしまった、我慢の蓋を開けてしまったので、さあ大変。足かけ3年、藤原道夫監督率いる映画製作チームに恵まれて、良い映画にできたと自負しています。岡田節人先生の対談の「作品づくり(=品格のある娯楽)」へ答えるという気持ちも支えになりました。

ところで映画は、映画館の暗がりでたくさんの人々とスクリーンを共有する体験を通して初めて映画となるのです。だから私は3年前に映画をつくろうと決めた時点で、映画を掛ける人々のネットワークのメンバーとなりました。現代において映画館という「場」を真剣に考えることが、自分がどのような映画をつくるかということと切り離せないと考えたからです。映画館の未来は決して明るいものではないけれど、そこに真剣に向き合う人々と過ごす時間はかけがえの無いものです。ドキュメンタリー映画「水と風と生きものと 中村桂子・生命誌を紡ぐ」の公式Facebookにもコメントしましたが、映画の完成は、道半ば、ここが始まりです。9月の東京でのロードショーを皮切りに全国各地のミニシアターで上映を予定しています。この展開に皆様のご支援をお願いします。

映画館での「水と風と生きものと」の上映とは別に、生命誌の催しの一つとして、この映画に登場して頂いた新宮晋さん、関野吉晴さん、ぞれぞれの取り組みに取材したすぐれたドキュメンタリー映画を鑑賞する会を、別に企画しています。「人間は生きものであり、自然の一部である。」という生命誌のメッセージを、別の切り口から考えさせてくれる作品です。秋の実施に向けて詳細が決まりましたらまたご案内させて頂きます。映画館という場で過ごす「時間」は、毎日の生活から少し外れて、自分を見つめ直すよい経験を与えてくれるものです。みなさんも、ふと日々の営みを外れて映画館へ足を向けてみませんか。

[ 村田 英克 ]

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