展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【生命誌のコンサートホール】
2015年6月15日
はじめまして。4月から展示ガイドスタッフとしてお世話になっている、岩木真穂と申します。よろしくお願いいたします。
生命誌研究館は「科学のコンサートホール」と表現されるように、英語では、Biohistory Research Hallです。私は小学生のころから、オーケストラに参加していましたので、その経験から思ったことを少しここに記したいと思います。
オーケストラの醍醐味である交響曲は、多くの楽器のパートで編成されているので、大きな演奏会になるほど、壇上の人数も多く、一つのパートに何人もいます。このため、各楽器の各パートが協力し、さらに他のパートや楽器の音を注意深く聞いたり、合わせたり、主張したり、スコア(総譜)で自分とは関係ないパート譜も見たり、指揮者のもとインタラクティブにしていかないと、ひどい場合には、練習で曲を1回通すことさえ困難です。良い演奏というのがどういうものか、ということにもよるのですが、記憶に残るような良い演奏はそう簡単にはできないのかもしれません。ただ、私はまだまだ修行中ですが、良い演奏には各自が持つ個性を良い形で表現できるようにするということが大事だと思います。
コンサート・ホールの場合、基本的には、演奏者や聴衆、そしてスタッフ等の参加している人がその"場"に音楽を楽しみに来られていると思います。いろいろな世代、価値観、時には海外の人たちとも交流し、多種多様です。また、一流といわれる人たちと共演できるのも楽しみの一つです。一流といわれる人たちの練習量が半端ないのは、よく知られていることだと思いますが、そのような人たちと同じ"場"で、演奏したり、見たり、聞いたりできることは得るものが大きいと思います。人々が奏でる音楽は1つとして同じものがなく、その"場"で一緒に演奏を通じて交流するというところは共通していると思います。科学にも通じるものを感じます。
生命誌研究館の展示ホールでは、DNAを中心に生物の多様性と共通性などについて表現されています。この生命誌のリサーチホールは、生命について楽しみながら一緒に考える"場"だと思います。よくいわれることですが、そこにいる生きものにとって棲みやすいということは、人間にとっても棲みやすいことであると思います。この科学のコンサートホールで得た知見や感性を未来に生かしていくということが大事だと思います。