展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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テレビをめぐる悩み
2013年12月2日
東北大学のある研究グループの発表(11月18日付)によると、「長時間テレビ視聴が小児の高次認知脳領域の発達性変化や言語性知能に悪影響を与える」らしい。そんな話は初めて聞いたというような感想を持つ人はあまりいないと思います。これまでも所謂「知能」と関係が深い、脳の高次認知に関わる領域の形成は、小児の発達過程で神経ネットワークの刈り込みによって起こる、灰白質の減少と関連するとされていたけれども、そのような脳の形態や機能が、テレビ視聴を含む生活習慣とどのように関連するのかを、200人以上の研究参加者(小児)を対象とする脳画像解析や、数年にまたがる統計学的調査・解析などを組み合わせて明らかにできたという点が今回の成果だということです。
私は、テレビ受像機を家に持っていません。昔、画面横縦比が4:3のNTSC方式の頃は、まだなんとなく流して見ることもできましたが、とくに16:9のHD解像度になってからは、こちらが画面に吸い込まれそうで怖くて、持たないことにしました。見始めると内容に関わらず画面に真剣に見入ってしまい、体力と時間をかなり持っていかれ疲労困憊するからです。幸い、家内も「テレビいらない」と言う人なので必要な情報は他の媒体から得るようにしてきました。
だから先日3歳になった息子にとって、今のところ家にテレビがないのは当り前で不満はない様子です。しかし、今、わが家はテレビ受像機を買うべきか否か悩んでいます。彼もそろそろ保育園のお友達もでき、みんなと一緒に遊んでいるようなので、共通の話題として流行の子供向け番組くらいは知っておかないとまずかろうと、じゃあ買おうかな、と。しかし、もう一方で、スーパーマーケットで販促用の液晶画面に釘付けになり、「あわてん坊のサンタクロース」とか、「さかなさなさかな…」などの歌にあわせて、全身で揺れ動き「すごいねえ、面白いねえ」と言いながらその場を離れようとしない様子を見ていると…やっぱり買わない方がいいな、と。そんな中で、東北大学のリリースを知り、やっぱりそうかと思う反面、だからと言って原理主義はいけません。テレビを悪者にしても始まりませんから。恐らく近い将来、わが家にもテレビ受像機を置くことになると思います(そういえば「お早よう」っていう映画を知っていますか)。その際には、息子とも事前によく話し合って、どのように見るかをちゃんと約束し、お互いにその約束を果たすように努力しなければなりません。家庭内では、当然、テレビをめぐっていろんな欲望が生じ、その欲望をめぐって葛藤することになるでしょうが、そのような場面において、上述の東北大学の知見も、ある程度、親側の判断を後押しするような形で貢献してくれるであろうことを期待しています。