展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
バックナンバー
【エンピツくんとエビ】
2013年4月1日
エンピツくんは、研究館入り口の水槽で皆さんをお出迎えする南米肺魚、レピドシレン・パラドクサです。肺で呼吸するので時々水の上に口をつきだして空気を吸います。英語の通称はscaly salamander-fish(ウロコのあるサンショウウオ魚?)というそうですが、確かに稚魚はウーパールーパーとそっくり。外鰓を持っていますし、2対のヒレも足のようにだんだんに伸びています。まさに魚類と両棲類の間に位置する生きものでしょう。
肺魚たちには、肉食魚用の粒餌をあげていました。ところが昨年の今頃からなぜか食べなくなってしまったのです。特にエンピツくんは、粒餌を入れると不満そうに蹴散らして、ちっとも食べようとしません。そこで水替えをお願いしているラフアクアリウムの方に相談して巻き貝を入れてみました。オーストラリア肺魚のアボカドくんは、すっかり気に入ってあっという間に平らげましたが、エンピツくんは食べているのかいないのかわからないくらいしか減りません。偶然食べているところを数回見ましたが、口に入れては吐き出しをくり返して、やっと食べています。水槽の解説に「顎の力が強く、昆虫や貝をかみつぶして食べる」と書いてありますが、実はこれはアボカドくんの方です。調べると野生状態ではエビを食べるという記述を見つけたので、エビをあげようと思い立ちました。エビを養うのは手間ですが、そこはエンピツくんのためと窓辺にエビ水槽をたちあげました。置いてみると悠然と泳ぐエビはなかなか美しく、見ていて楽しいものです。そして、さっそくエンピツくんの水槽に、エビを入れてみました。
目が見えているのか、つぶれた鼻は効くのかわからないエンピツくんですが、エビに乗られても鼻先をくすぐられても全然お構いなし。いっこうに食べる気配はありません。最初のエビとは一ヶ月以上一緒に暮らしていました。ある日いなくなりましたが、胃袋に納まったのか、循環槽に紛れてしまったのか分かりません。そこで今度は2匹入れてみました。エビというのは賢いのか2匹いると俄然積極的になります。エンピツくんの尻尾にかじりつき始めました。気づくと尻尾が齧り取られているではないですか。餌に逆に食べられてしまうなんて!あわててエビを取り出しました。再生力のつよい両棲類の親戚だけあって?傷は回復しましたが、食べないという問題は解決していません。もの言わぬエンピツくんをただおろおろ見守るばかりです。でも本当は訴えているのかもしれません。言ってるのに人間ってなんでわかんないんだろう、なんて。
エビと貝の水槽、和みます。
エンピツくんピンチ!
少し尻尾が短くなってしまいました。