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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【研究と日常】

2012年9月3日

村田英克

8月中旬の二日間、恒例のBRHサマースクールを終えました。一般の方から参加を募り、今年は17名の生徒さんを受け入れました。4つのラボと表現セクターで、館員と共にそれぞれの研究課題に取り組みました。こう書くと、毎年同じようなフレーズになりますが、実際は、毎年が新鮮で、盛り上がりをみせる企画です。

私は、ここ数年サマースクールの運営・進行を担当していますので、表現セクターの課題には深く関われない代わりに、各ラボ・表現で、皆が課題に取り組んでいる様子を都度、写真におさめたりしながら全体の流れを垣間見ることができます。その実感として、なぜ毎年サマースクールが盛り上がるかというと、どのプログラムも、いわゆる予定調和ではないということがあると思います。まず各研究課題も、この日のために新たに考えられたものなので、ラボによっては、「普段からやってみたいと思っていたけど、忙しくなかなかできなかったことを、この機会に挑戦してみよう!」という研究員も初めての実験だったり、あるいは、スクールが始まってから、新しいアイデアが出て、「予定になかったけど、やってみよう!」となったりするわけです。もちろん対象は生きものですから、これまた思い通りにならないことも…。しかも二日目の最後には、研究発表会があり、そこで研究顧問の先生からきびしい評価を受けるのです。そのゴールに向かって、始めて出会った人々が、どきどき、はらはらしながら協力し合い、課題に取り組んで行く中から自ずと一体感、充実感が出てきます。

二日間の実験研究に、予め答はありません。生きもの、そして本格的な機器や顕微鏡を扱い、さらにそこから出したデータを、議論しながら考察を深め、研究成果をまとめていくのですが、その一つ一つの過程で、探究する、生きものを考えるという「研究の日常」を、皆さん楽しんでおられたと思います。

個別の研究成果を総合する中から知識発見を目指す、表現を通して生きものを考えるセクターのスクールでは、サイエンティスト・ライブラリーの記事の蓄積から研究の展開を見出し表現するという課題に、平川スタッフを中心に皆で取り組み、ここからも予想外の楽しい展示企画が飛び出しました。当日、スクール生の方と話していて、教えられ、印象に残ったのは、「人(人物・人生)を通して研究を表現したサイエンティスト・ライブラリーの記事は、魅力的な人生の物語なのだから、もっと日常的に、科学や研究にあまり関心のない人にも読んでもらえるようにしたい。」という感想で、これはおっしゃる通りでこちらの課題だと思っています。

当日に向けての準備の段階では、遠方から参加される方もあるので、大雨や突然の雷雨など不安定な天候が続いた今年の夏は、悪天候による交通機関への影響、そして一時は、関西地方の計画停電などにも気をもみましたが、幸いそれらは杞憂に終わり、参加されたすべての方々のおかげさまでよい二日間となりました。ありがとうございました。皆さんの感想を集めて今年のサマースクールの報告を作り、9月中旬にホームページに掲載します。ご覧頂き臨場感を味わって下さい。

最後に、研究と日常というテーマに関連づけて、季刊生命誌74号の予告です。「科学が、楽しみや遊びとして人々の生活の中にあった」そんな時代のお話。中村館長の語り合いです。その編集をしながら、サマースクールの情景を思い浮かべながらの日記でした。9月中旬発行までもう少しお待ち下さい。

[ 村田英克 ]

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