展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【変わってますか?】
2012年7月17日
季刊生命誌の今年度のテーマは「変わる」です。テーマが決まると、さてそれをどうカードやジャーナルに表現するかが問題です。なにをしたって前と違えば「変わる」ですので、かえって「変わる」らしさを出せるかが難しい。最初に考えたのが、カードのかたちを変えてみる。正方形は変えられないけれど、傾けてひし形にしたらどうだろう。すっかり盛り上がって今年はひし形!というコンセプトでデザイナの坂さんが提案してくださったのが今回のケース(73号サンプルはこちら)。べつにひし形じゃないって?もうすこし驚きがあってもよいかと思いますが、あまり奇をてらいすぎず上品なところに納まりました。後ろに返すとなるほどひし形でしょ(写真)。それぞれのカードの向きをひし形にするのは無理と諦めましたが、それでも気持ちはひし形ということで、トークとサイエンティスト・ライブラリーを縦書き横書き混成にしてみました。縦横の織りなす対角線が見えませんか。
ひし形に見えますよね?
さて、変わる趣向の2番目は、表紙カード。そう、中村館長もお気に入りのエッシャー(72号トーク)のパターンです。かたちの遷移から変わるおもしろさを表現しようと考えました。表紙カードで変わらないのは、記事の中に登場する生きものを描きたいということ。ところが73号のリサーチは染色体と脳がテーマです。染色体と脳のエッシャーパターンはちょっと苦しい。そこでサイエンティスト・ライブラリーの長濱先生が長年ご研究されているお魚になりました。記事とあわせて、お楽しみください。
「変わる」の3つめは、おたのしみ付録のパラパラマンガ。これはもう変化を楽しむメディアですから、何を題材にしても変わることには違いない。パラパラめくる生命誌と題して「変わる」といえば、生きものの進化です。生きものの進化は目の前で再現できませんが、手軽なパラパラマンガなら挑戦できそう。生命誌の大きなエポックは、生命誕生、真核生物誕生、多細胞生物の誕生、陸への進出、人類誕生です。真核生物の誕生では、細胞内共生をとりあげました。パラパラと真核生物誕生にまつわる3度の共生が起きますが、細胞への入り方や分裂方向に、動きがでるよう何度も調整した苦心作です。20億年60コマという時間の流れとのギャップも面白いと思いませんか。
さて、「変わる」にこだわって工夫しましたが、実際完成のカードを手にしてみると意外に普通な印象です。変わっていても慣れてしまえば、同じなのかな。皆さんの印象はいかがですか。せっかく「変わる」なので、もうひと変身!と企んでみたくなります。