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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【誰のためでもなく】

今村朋子 博物館の運営や、大学での教育に携わる方から、研究館の活動について質問される機会が重なりました。よく聞かれるのが、「季刊生命誌や展示は誰に向けてつくっているのですか」という問いで、これには「生命誌に関心のある方、すべてです」と答えてきました。科学を分かりやすく伝えることが目的ではなく、生命誌のメッセージをその人なりに受けとめていただければいい。入館当初からこの思いは変わりませんが、ふと、あらためて考えると、作っているときは「誰かのために」ということを意識していないことに気が付きました。
 自分がやりたくて、面白いと思ったから作る。様々な分野の研究の中から、こう表現したら面白い!というものをひらめいたらすぐに周りの仲間に相談し、「いけてないよー」と言われても引き下がらない。よりよい案を出して、館長に相談し、OKをもらったら、業者さんと協力してプランを具体化する(OKをもらえなければ、何度でも挑戦する)。BRHの仕事はとてもエキサイティングで楽しいです。
 私たちのもの作りは、作って終わりではなく、きちんと世の中に出して現在の社会の中で意味のあるものとして位置づけることまでを含みます。しかし、最近よく耳にする「市民理解」「説明責任」という名詞には、上から目線というか、外からの評価ばかりを気にして主体がないような気がしています。調べると、サービスは「奴隷」が語源で、ステークホルダーは掛け金を預かる第三者を指すことばだと知り、違和感の理由がわかりました。受けとる側を想像して物を作ることは大事ですが、無目的に評価を求める制作物は「よく考えること」を放棄しているから、とても薄っぺらく見えます。数字で評価される現在の社会の中にあって、BRHは、個々のスタッフの自発性と責任において、誰のためでもなく、自分が大事だと思う仕事ができる本当に恵まれた職場だと思います。
  仕事のアイディアは市場調査やアンケートから生まれるのではなく、(私の場合は)突然ふってくることが多いです。ことしの季刊生命誌のテーマもその一つ。12月の朝、BRHの並木道を歩いている時、ふとひらめきました。これについては6月の次号の発行をお楽しみに。もう一つ、朝の通勤電車で新しいBRHグッズを思いつきました。田近先生や、磯崎先生安田先生のお話と関わりますが、地球の歴史を表す地層と生きものの歴史を重ねたメモパッドです。現在生きている生きものと、地球環境は長い時間の積み重ねであることが実感できる! と考えました。このアイディア、いけてると思いませんか? 完成はいつになるかわかりませんが、よりよいものになるよう、ぜひご意見をお寄せ下さい!



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 [ 今村朋子 ]

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