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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【遠くにありながら】

村田英克
 今年度に入って、私は、BRHホームページの定期更新の担当を務めています。これはインターネットというメディアを介して、遠くにいる方々との距離をどうやって縮めていこうかと日々試行錯誤する作業に他なりません。
 生命誌の活動の基本は、ここ研究館の毎日で取り組む研究と表現にあります。一人でも多くの方がこの場で考えることができるように、展示をつくりガイドする日常に月1回のレクチャーやツアーなどの催しを加えて、通年の活動を行っています。研究し表現する現場から生まれてくるものを直接感じとり、お互いを尊重し合って、個々の責任を基として共に考えを深めることのできる「場の共有」を生命誌では大切にしているのです。なぜならば生命科学の知見は、本来、都合よく切り出された情報としてではなく、「生きていること」として全体的に引き受けるほかはないものだからだと、私は考えます。このような当事者性を原点に、経験を拡張する延長に位置づけられたバーチャルリアリティには、「遠く」にありながら、場を引き寄せる可能性が感じられます。
 SICPで取り組んでいる研究を表現する6つのメディアは、それぞれ、「遠く」にありながらも「生命誌」という場を切望し続けるメディアです。例えば、季刊生命誌で研究する現場に赴くこと、研究を語り、描くこと、それらを読み込むこと、あるいは、研究館グッズを組み立てること、ホームページで意見を述べること・・・、それぞれ遠方に身を置きながらも、考える作業を実践し、メディアで通じ合い距離を縮めていくことができます。遠方からBRHに接触する窓としてのBRHホームページには、まず、実際にBRHで起きている様子の生きた写像であることが求められます。さらに、距離を意識せずに参加できる柔軟さが求められます。日々のメンテナンスを通じて工夫を重ねて参ります。
 さて、私はもう一方で、距離がほぼ “0” の仕事も担当しています。館のメンバーと一緒に、はるばる遠方から高槻までやってきた方々を迎え入れ、「ここ」で本物を楽しみ、考える機会を提供する調整役です。7月30日、31日の二日間には、今年のBRHサマースクールを行いました。その様子は、後日、このホームページでもご紹介します。スクール生と館メンバーが限られた時間と場所を共有する中から生まれる充実感、達成感は言い表せないものがあります。毎年、元気をもらえる催しです。参加された皆さん、ありがとうございました(感想文もお待ちしています)。

 [ 村田英克 ]

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