展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【パッと見て美しいもの】
「愛づる」をテーマにした新しい展示を考えています。どんな内容にしようか、まずはざっくりとしたストーリーを書き出し、先週中村先生に相談したところ「細かな構成はいいから、伝え方の工夫をなさい」と本質的なアドバイスをもらいました。BRHの表現は「科学として正しく、かつ美しいもの」が求められます。理論的に正しくても、パッと見て美しいものでなければ伝えたいメッセージは届きません。「科学としての正しさ」を意識するあまり、頭でっかちになっていた自分を反省し、もう一度表現方法の模索を始めています。 振り返ると、私のBRHでの最初の「表現」は、季刊生命誌50号の対談の写真のセッティングです。実はこの時、窓際に一直線に並べていた季刊生命誌を、収録直前になって「このほうが面白いはず!」と扇形に配置しなおさせてもらいました。新人の無謀さで、今なら「季刊誌を地面に置くとは何ごとだ!」と制止するところです。結果、50号という歴史の広がりが直感的に伝わったわけで、「思いついたらやってみる」という自分の仕事の原点になりました。 以来、対談の写真は、語られた内容、相手の人となり、対談から生まれた生命誌のメッセージが直感的に伝わるよう、カメラマンの大西さんと相談しながら進めています。写真は一瞬を切り取り、後付けの言葉のない分、雄弁にイメージを語ります。最新号の対談では、シアノバクテリアが地球環境を変えたという話題と関連して、地球と生命の共進化というメッセージを伝えようと、BRHの2階の踊り場に置かれた「光合成モデル」を撮影場所に選びました。 写真がそうであるように、パッと見て美しく、メッセージが伝わる表現方法は何か。初心に返り、「愛づる」というメッセージを伝えるに一番いい表現方法を探して、今日も頭を悩ませています。これぞというものを思いついて、展示が完成したら、またご報告します。 左:50号の対談の当初案。これだと普通でつまらない? |
[ 今村朋子 ] |