1. トップ
  2. 語り合う
  3. 【生きもののパズル】

表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

バックナンバー

【生きもののパズル】

齊藤わか
 ジグソーパズルをばらすと、多様な形のピースの山になります。一個一個はばらばらの形をしていても、組み立てるとひとつの絵になるというのがパズルの面白さです。逆に、ばらばらの形のピースを適当に集めて、それを組み立ててひとつの絵にできるかというと、それはほぼ不可能といっていいでしょう。前回の表現スタッフ日記の内容と重なりますが、私が生ものの多様性の秘密を知りたいと思ったのは、生ものの世界は後者を可能にしてしまう仕組みを持っているに違いないと考えたからです。各々好き勝手な姿で生きている生きものが多様なように見えました。だから好き勝手を認め、どんな個性でも生かすのが生きものの世界だと思っていました。
 しかし実は生きものの世界はそんなに甘いものではなく、むしろはぐれ者を排除してしまう仕組みで成り立っていることがすぐ分りました。多様な姿形や性質は、厳しい環境に適応するため、または他の生ものとの競争の中で生きる道を確保するためにできたものであり、これがうまくできなかった者は進化の過程の中で淘汰されてしまいます。多様に見えたピースの形は、好き勝手の結果ではなく、それぞれ長い歴史と深い訳が隠されていたのです。あては外れてしまいましたが、個々の生きものの歴史や生態を探るのがやはり面白く、生きものに興味を持って良かったなと考えています。
 生命誌研究館には、生きものの歴史や生態を探る研究が多く紹介されています。館内ガイドを始めて1年と少しが経ちましたが、情報を詰め込みすぎず、かといって表面的な説明に留まらないように...といろいろ考えてガイドを行っていますが、まだまだ勉強と修行が必要だと実感しています。

 [ 齊藤わか ]

表現スタッフ日記最新号へ