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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【SICP研究の方向性を探る 手法編】

坂東明日佳
 この秋には色々な人たちと研究ディスカッションをさせていただきましたが、中でもゲノムインフォマティクスの研究者たちとの交流が強く印象に残っています。彼らから研究結果を「どう形にしたのか」事細かに質問されるうちに、「私は何をしたかったのか」まで考えさせられたからです。私も今まで「どう形にすべきか」に欲望とやりがいをもって研究に取り組んできたので、SICPスタッフや他の研究者たちの質問とはまったく異なる、計算機や数式を使う情報処理の切り口に、戸惑いつつも、大きな魅力を感じました。
 私は今生命科学研究の情報を体系的にまとめ、研究動向を視覚化する方法を研究しているため、大量の研究情報を扱う必要があります。この作業を効率的に行う方法を教えてもらえるか、と協力者を探すような淡い期待で情報処理分野に目を向けてみました。ところが今回「与えられた指示を実行することが計算機の役割で、計算機に何を与えるか考えるのは人間の役割だ」ということを実感。つまり情報処理といっても「自分が本当にしたいことは何か」例えば「生命現象の理解とは何か」を地道に考えるような人間くさい作業から始まって、自分の思考プロセスを計算機が理解可能な形に変換するところまで突き詰められたとき、ようやくそれを計算機に実行させ、迅速且つ説得力のある答えを導き出すことができることを、実例を通じて教えられました。最初から最後まで1人の人間の中でのできごとでした。
 私は今のSICP研究で、いかに計算機にやらせるかというところまで追求したことはないですがこれまで「分子生物学の本質とは何か?」という疑問を考え続けて自分の手を動かしたからこそ、なんとか研究動向を分かりやすく表した形を作ることができたのだと思います。今後は、情報処理の考え方を学び、材料も分子生物学全体から特定の高次生命機能に関する研究に絞って、研究の動向を「どう形にするか」一から探ってみたいと考えています。情報のジの字も知らない私にそれが可能なのか?と大きな不安がありますが、皆で使えるモノを作ることに挑戦したい気持ちと、SICPで試行錯誤してきた1年半が「不安でもよいから進むべし」と後押ししてくれています。まずは今の研究を修士論文としてまとめ、さらにより多くの人に見てもらうために世の中に送り出す方法を考え中です。


 [ 坂東明日佳 ]

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