展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
バックナンバー
【月下美人】
8月23、24日、恒例のサマースクールで「サイエンスコミュニケーションで何かを伝えたい」と SICPセクターに集まってくれた皆さんとのディスカッションでも改めて感じたのが、知識や発見の集積だけではなく、そういうふうになっていることへの驚きや感動の大切さ。植物も、赤ん坊も、そういうふうになっているからこそ、時が満ちて、受精卵が分裂し、花開き、胎内から生まれてくる。お題は「クローンをテーマに展示をつくる」だったが、クローン人間の是非を倫理などでとやかく言う前に、生きものとしてそういうふうになっていることを、見つめ直して、そこから出発しようというところに落ち着いた(全員ではないけれど)。 『その昔、なりたいと思えば人は動物になれたし動物も人になれた、みんな同じ魔法の言葉をしゃべり、口にだせばそれが起こった。世界はただ、そういうふうになっていた』、エスキモーに伝わるお話だ。科学にもきっと、そういうふうになっていることでストレートに伝わる魔法の言葉みたいな部分がある。じゃあ、それを展示で伝えるとなると、どうするのだろう・・・。こうやってうねうね考えるのは悪い癖だ。「くわこって頭で考えすぎなんだよね。私みたいに毛穴で考えないと!」とチーフの工藤さんに叱咤(?)される身としては、月下美人の気孔と毛穴を通じ合わせ、来年の夏には「おほほ、今夜がその時ね」と笑いたい。 [桑子朋子] |