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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【トロントの時間......】

1999年6月15日

 先日行われた発生生物学会に合わせて、トロント大学名誉教授の増井禎夫先生が帰国されたので、これはチャンス!とお会いしてきました。
 取材などで話を聞いてくると、うずうずして、編集部のみんなに話したくなるのですが、今日はここで、聞いていただこうと思います。
 増井先生は、受精卵の分裂を制御している因子を見つけた人ですが、大きな仕事をなさった背景には、先生が若い頃からずっとトロントで研究していらっしゃるということが関係しているんじゃないかなと思ったのです。
 とても印象的だったのが、向こうでは、「元に戻るゆとりがある」という言葉でした。これは、もちろん、いろんな意味でのゆとりでしょうけれど、実際には時間のゆとりが大きいのだろうと思います。
 いままでにも、『生命誌』のサイエンティストライブラリーのシリーズでいろいろな研究者の方にお会いしましたが、どなたの場合も、自分の独自のテーマを求めて、自分を掛けて来たということは、共通しています。しかし、世の中、だんだん自分をかけることを許さなくなってきているという気もします。失敗したら、また元にもどればいいという気持ちがなければなかなか冒険もできなくて、必ず結果がでるものを効率よく選んでしまうことにもなってしまいますよね。
 いろいろな人から少し前の時代の研究を伺って、もちろん共通することも多いのですが、時間の流れ方が違うのかなあというのが一番思うことです。
 話の内容は、『生命誌』25号(11月初旬発行)にサイエンティストライブラリーとして掲載する予定です。詳しいことは、そこで読んで下さいね。  
[高木章子]

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