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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【発生生物学は面白い?難しい?】

1999年6月1日

 5月の末、神戸にある甲南大学で行われた日本発生生物学会という学会に行ってきました。今年は、神戸周辺や大阪の会員が中心になって運営するということで、大学院時代からの会員である私も、同じく生命誌研究館の青山主任研究員と一緒に手伝うことになったのです。
 実は、SICPの仕事を初めてから、この学会には一度も初めから終わりまで参加したことがなかったのですが、今回、運営委員の一人として参加したおかげで、久し振りに全部を見ることができました。
 卵から動物や植物などの体ができる過程で、どんな遺伝子やどんな物質が働くのか。DNAの技術が完全に広まった今では、脳、目、手足、などなど、体の各部分がどのような遺伝子の働きでできるのかが、かなり詳細にわかるようになってきています。学会では、そうした形づくりの遺伝子や、そのスイッチをオンやオフにする細胞の相互作用などに関する研究が、いくつも発表されました。
 そんな中で、たまたま取材に来ていた知り合いの朝日新聞の科学部の記者の人に言われて思ったのですが、どうも現代の発生生物学というのは、ある程度長い期間その分野にいる研究者にとっては面白くて仕方がないのだけれど、詳しいことを知らない人にとっては相当とっつきにくいもののようです。同じことはスタッフの鳥居君や工藤さんも言っていたので、ひとりや二人の意見ではなく、多くの人の意見です。
 これはいったい何ごとか。とりあえず思いつくのは、生物の発生(ここでは個体の発生のこと)が、分子から細胞、組織、個体といった異なるレベルの現象を含んでいること。また、研究が、筋肉、消化器官、手や足、心臓、そして脳といった体の各部分ごとに別々に行われていて、お互いのつながりが見えない、といったことが、わかりにくさの理由として思い付きます。
 では、面白さが伝わるようにするためにはどうすれば良いのか。新聞記者の方々はどうすればよいのか。いつも思ってきたことですが、改めてまた考えてみようと思わせてくれた学会でした。  
[加藤和人]

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