研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
バックナンバー
紅葉の季節
2017年12月1日
鮮やかに色づいた木々を見ては摂津峡に行きたいなと思いながら、研究室でクモの胚を見ています。あまりに摂津峡に行けそうにないので、クモ胚を鮮やかに染めることにしました。…というのは冗談ですが、発生が正常に進行しない表現型の胚の細胞の構造を観察するために、ファロイジン、βカテニン抗体による蛍光染色に初めて挑戦しました。ファロイジンは、タマゴテングタケ由来のペプチドで、細胞骨格を構成するアクチン繊維に結合します。一方βカテニン抗体は細胞間接着複合体を構成するβカテニンタンパク質に結合します。抗体染色のための固定は、ホルマリン固定の時間や洗浄液(バッファー)の条件が in situハイブリダイゼーション用と異なります。目的のタンパク質や観察したい細胞の構造を壊さずに固定することが重要になるためです。また、クモ胚では卵黄が蛍光観察の邪魔をするため、うまく取り除くことが必要になります。手早く固定し、美しくスライドガラスにマウントし、蛍光が退色しないうちに顕微鏡で観察します。気遣いがとても多い蛍光染色ですが、どうやら染色はうまくいった様子でした。細胞の輪郭が赤く染まったクモ胚を観察すると、やはり美しいものを見たときの高揚感があります。じきにそれらの写真もご紹介出来るよう、引き続き実験に励みたいと思います。