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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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ふたご、ふたたび

2017年6月1日

秋山-小田康子

ふたごは凄いなと改めて思うのは、卵の中の細胞に思いを馳せる時でしょうか。改めて、と書くのは母が(というか、母と伯母が)一卵性双生児だということもあって人間のふたごはわりと身近で、その凄さ(?)、例えば一緒に暮らさなくなっても別々の場所で色違いの帽子やワンピースを買ってしまうといった事象、を目にしてきたからです。発生生物学的な観点から改めて感じるふたごの凄さは、それを作りあげる細胞の能力にあります。私たちが扱っているオオヒメグモでは、これまでにも書いたように、ふたごができることがあります。私たちのグループでは岩崎さんの実験でふたごをある程度の確率で作ることができるようになってきており、1つの卵の中の細胞たちがどうして1つの個体を作りあげることができるのか、それともこっちだけで1つになってしまおうとするのかなどを研究できる状態になりつつあります。いつか研究者の集まりでそんなことを話していたら、細胞は集まると別々の個体を作らないようにする(なる?)のではないか、という考えを言われました。!です。確かにそのような考え方も充分ありなのでは、と思います。そのとき話題になったのがpoly-embryonicな生き物です。例えば他の生き物に寄生する昆虫の中には、1つの受精卵から2000匹もの個体が生じるものがあるのです。以前読んだ論文に、そのような卵で体節形成遺伝子の発現を可視化した写真がありました。改めて見てみると、卵の中に縞々の発現をもつ無数の胚を見ることができ、なんだかいじらしく、かわいらしく、でもちょっと気持ち悪いもので、そうか、細胞は個体になりたいのか、などと思わせるようなものでした。

さて、5月の発生生物学会ではカエルの卵でふたごの研究をしている研究者とお話しをすることができ、楽しかったです。そこに潜むメカニズムにクモとの共通性を感じつつも、まだまだ分からない、もやっとした感覚を持ちました。知りたいことはまだたくさんあります。学会ではさらに、お話しした研究者のボス(アメリカで研究する著名な研究者)と短時間ですがお話することができました。総説に私たちの論文を引用してくださったこともあり、クモの研究を応援してくれていると勝手に私が思っている方です。何年か前の発生生物学会でもお話ししたことを覚えていてくださり、今回のプレナリーレクチャーのスライドにクモが登場していて、本当に嬉しく思いました。おもしろいと思ってもらえるような研究をしていきたいです。

[ ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 秋山-小田康子 ]

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