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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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絞め殺しのイチジク植物

2016年11月15日

蘇 智慧

前回の日記を書く時に、ちょうど八重山諸島に研究材料を採集に行ってきたところで、イチジク植物のことを書きましたが、今回もまた偶々沖縄採集に行ってきたところでしたので、もう一回イチジク植物の話を書いてみたいと思います。

イチジク植物は、熱帯雨林のキーストーンプラントでありながら、絞め殺しの木の代表的なものでもあります。日本産の植物の中で、絞め殺しと言えば、おそらく多くの方の頭にはガジュマルが浮かんでくると思いますが、ガジュマルがイチジク属の植物の1種であることはどれほど知られているのでしょう。ガジュマルのほかには、アコウやハマイヌビワといったイチジク植物も絞め殺しの木です。これらの植物による絞め殺しの光景は今回の採集の中で多く見られました。

 

沖縄北部の大宜味村に六田原展望台という場所があります。そのあたりとそこに至る道沿いに寒緋桜(確認できていません)のような木がたくさん植えられていて、素晴らしい花見の場所だろうと想像できます。しかし、これらの桜の木はイチジク植物の宿主(絞め殺しの対象)になってしまっています。ある桜の木の大きな幹がガジュマルにほぼ完全に覆われ、いかにも息苦しそうな様子に見えました(図1の右上)。また、その隣の桜の木は、アコウ、ガジュマルそしてハマイヌビワ、なんと3種のイチジク植物に入り乱れに絡まれ、枯れて無残な姿となってしまいました(図1の左と右下)。これらの絞め殺し植物は、ほかの植物の幹の上だけでなく、岩の上でもコンクリートの上でも種子が発芽して立派に生長していきます(図2)。イチジク植物の生命力の強さと自然界の生存競争の厳しさをあらためて感じさせられる採集の旅でした。

[ DNAから進化を探るラボ 蘇 智慧 ]

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