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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
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NGS現場の会 第3回研究会は刺激的でした

2013年10月1日

尾崎 克久

今、生物学の世界では正に革命的な変化が起きていて、その中心にあるのがNGS(次世代型シーケンサー)です。

短期間で大量に塩基配列を決定する機械があることが、何の役に立つのかピンとこない方もいらっしゃるだろうと思いますが、NGSはいわゆる“モデル生物”と“非モデル生物”の境界を曖昧にしてしまい、古くから多くの研究者の探究心と好奇心を刺激してきた興味深い生命現象の解明に挑戦するための、とても強力な武器なのです。当館のコンセプトのひとつである「生物を生き物として理解する」ために、欠かすことのできない存在です。

NGSが加速している生物学の大きな変化は、正にパラダイムシフト*と言える大きな流れを作っていると思います。

そのNGSの活用方法について、分野横断的に交流し、研究の「現場」の情報を交換するための集会が「NGS現場の会」です。僕は昨年の第2回研究会から参加させて頂いていますが、今年神戸で行われた第3回研究会は700人を超える参加者が集まり、活気溢れる集会になりました。

今回、「アカデミック・セッション」という研究紹介のためのセッションに招待して頂き、アゲハチョウの食性に関する研究とそれに関わるNGS(illumina Miseq)の活用方法について紹介する機会を頂きました。

この中で、illumina 社の Nexteraというゲノムライブラリー調整キットについて、作成したライブラリーから低分子DNAを手軽に除去することでスループットとアセンブルの効率を改善するという「現場の会」らしい現場の工夫を紹介したところ、多くの方に興味を持って頂けました。会期中も終了後も、多くの方から具体的な方法についてお問合せを頂いています。論文の「材料と方法」ではなかなか伝わらない、実験の現場での工夫やノウハウが話題の中心になって情報交換できるのも、NGS現場の会の醍醐味でしょう。

かく言う僕だって、出来るからやっているわけではなく、ひたすら新しい工夫と挑戦の日々ではありますが、こういったノウハウは隠すことなく研究者間で共有することでより意味が深まりますので、様々な形で公開していきたいと考えています。

また、僕の研究内容についても興味深い議論をして頂いた方も多数いらっしゃいました。これまでに無かった質問や指摘もいくつかあり、新鮮なお話を聞くことができました。

色んな分野の研究者がNGSというキーワードで一堂に会し、交流を深めることは実に刺激的だと思いました。人数規模が大きくなり、参加者の活気は国内の多くの学会を凌駕する集会になってしまいましたが、NGSが文房具のような存在になって時代の役目を終えるまでの間、もうしばらくはこの学会とは異なる自由な雰囲気と現場主義の集会は、多くの研究者の感性と知的好奇心を刺激し続けてくれるだろうと期待しています。


*
“パラダイムシフト(英: paradigmshift)とは、その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化することを言う。”
Wikipediaから引用
http://ja.wikipedia.org/wiki/パラダイムシフト

[ チョウが食草を見分けるしくみを探るラボ 尾崎 克久 ]

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