ずっとずっと欲しかった本がイギリスの古本屋さんで売りに出されているのを見つけ、ようやく手にいれました。手元に届いてみると思っていたよりもボロボロで、少しがっかりしていました。ページをぱらぱらとめくった後、ふと見ると裏表紙に前の持ち主が署名をしていました。筆跡をたどって名前を読んでみると、なんと、前の持ち主はハチの研究をしているひとなら知らないひとはいないくらい著名なドナルド•クイッケ博士でした。こんな恐れ多いお下がりを僕がいただいてもいいのかと、とても恐縮しました（実際はステーキを買うくらいの勇気を出して買ったのですが…）。でもこの偶然に「がんばれ！」と背中を押してもらっているような、「次はお前だ！」と言ってもらっているような気がなんだかしてきて身震いしました。やる気がでないときは、この本を開いて、そうだそうだ僕にはこれがあるんだ、とニヤニヤしています。何度も開いたためかページがとれかかっているところは今まさに勉強しているイチジクコバチのスケッチ画のページで、クイッケ博士も興味を持っていたのかと思うとそれもまたうれしくなりました。いつか本当にお会いできたときは「やる気を勝手にいただいていました。どうもありがとうございました。」とお伝えしたいと思っています。「あーそれ、僕じゃないよ」というオチとかがあって夢がしぼんでしまいそうですが。右か左か迷ったときは、きっとこの署名が（もちろんこの本自体も）僕を導いてくれるんだと思いながら、イチジクコバチの勉強をしています。

[ DNAから進化を探るラボ 和智 仲是 ]