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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【かたちが先か遺伝子が先か】

 ある遺伝子を機能できなくなるようにすると頭がなくなり、逆に本来は発現していない場所でその遺伝子を異所的に発現させると頭が2つになるという結果が出た場合、その遺伝子には頭をつくるという機能があるといえます。では、遺伝子発現の結果としてあるかたちができるとき、そもそも通常の発生過程でその遺伝子発現を制御している機構は何なのでしょうか?その答えを別の遺伝子に求めることもできれば、“かたち”に求めることもできると思います。
 かたちが遺伝子発現を制御している例は、マウス胚の左右決定です。からだの左右片方だけで発現する遺伝子はいくつか知られていますが、それらの遺伝子発現の左右を決めているのはノードという場所にある繊毛のかたちです。繊毛が一定方向に回転運動することにより、体液が右から左へと流れ、左右非対称性を作り出し、それが左右決定へとつながるそうです。かたちを作り出す分子の正体を明らかにしようと研究していると、遺伝子の上流・下流と遺伝子カスケードだけに注目してしまいがちですが、かたちも遺伝子発現の制御に重要な要素の1つだと考えられます。
 脊椎動物は細胞数が多く、卵から個体ができるまで、1つ1つの細胞運命を追うことは困難ですが、そもそも厳密に運命は決まっていないでしょう。1つの遺伝子カスケードで全ての細胞運命を決定するには限界があります。1つの遺伝子カスケードである程度までかたちを作ったら、それを基に細胞間などでコミュニケーションをとって、自分の置かれている場所を知り、自分が何になればいいのか調整し、また新たなかたちを全体としてつくっていくということを繰り返しているのではないでしょうか。まだ詳しくは書けないのですが、最近偶然からこのようなことを考えさせられる現象を見つけました。この後どう転ぶかは分かりませんが、いつかご報告できればと思います。


[カエルとイモリのかたち作りを探るラボ 西原あきは]

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