研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【中国でのサンプル採集】
これまで何回か中国でオサムシや、イチジクとイチジクコバチの採集をしましたが、いずれも中国科学院や大学などの研究機関との共同研究の形式で、これらの研究機関の研究者と連携して採集作業を行ってきました。私が採集場所と日程さえ決めれば、後のことはすべて共同研究者が手配してくれました。簡単に手配と言っても、実は色々な面倒な手続きがあります。中国での生物材料の採集に必要な様々な許可書の申請、車のチャーター、宿泊の予約、現地案内人の手配、地方政府への事前連絡など沢山のことをしなければなりません。これらのことをすべて中国側の研究者に任せているため、これまでの採集は非常にスムーズで、楽な採集旅行でした。 先月下旬に「Seventh International Symposium on Fig-Fig Wasp Biology」に出席するために中国雲南省の最南端の熱帯雨林、西双版納に行ってきました。西双版納には豊富な(数十種)イチジク植物が生息しているため、シンポジウム出席の他に、サンプル採集はもう一つの目的でした。しかし、採集はこれまでのように簡単ではありませんでした。関係機関に打診してみると、各種許可が下りるのは申請から数ヶ月かかると言われました。このように手続きしていくと、全く間に合いません。しかし、ここまで来てあきらめるわけにもいきません。そこで、急遽「西双版納熱帯植物園」でイチジク植物とコバチを研究している先生と連絡を取り、何とかできないかとお願いをしました。得られたアドバイスは植物園の外での採集はあきらめ、植物園内で採集することでした。勿論その先生の配慮がなければ植物園内での採集も不可能であることも言っておきたいです。その植物園には思ったよりイチジク属植物の種類が多く、結果的に非常に満足なサンプル採集ができました。 シンポジウムのほうには、イチジク属植物とイチジクコバチを研究している世界の研究者のほとんどが出席されました。私は始めてこのシンポジウムに参加したが、多くの研究者と直接交流ができて大変有益でした。特にイチジクコバチの大家であるフランスのRasplus博士にコバチの同定を依頼出来たことは、我々のこれからの研究にとって非常にプラスになると思います。 | |
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