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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【食草園見つけた】

尾崎克久

  今春、館内案内の他に食草園の整備で大活躍の藤田さんに、食草園で羽化したナミアゲハがいると教えていただき、写真を撮ることができました(写真1)。

写真1
 これは昨年秋にここで成長して、越冬し、無事に成虫になったものだと思われます。食草園はBRHの「屋上」というより、「4階の屋根なし部分」にあるという環境ですので、周辺は夜間でも明かりがついていることが多く、日長条件が不自然になっているのではないかと思うのですが、よくぞ間違えることなく臨界日長を読み取ったものだと感心します。それ以上に、建物の壁に覆われてひっそりと存在する食草園をみつけて、しっかりと産卵することができるのだということに驚かされます。チャンスは最大限に活かす、昆虫の生き様でしょうか。今年もナミアゲハ雌成虫が頻繁に飛来し、たくさんの卵を産みつけています。人気の高いミカンの鉢は、幼虫に食べ尽くされてすっかり丸裸にされています。

 この冬から、高槻市役所職員の安藤さんから頂いたイタリアンパセリを、食草園手前側ど真ん中の一番目立つところで栽培しています。イタリアンパセリはキ アゲハの食草です。今月に入って種をつけ始めたので、栽培量を増やして飼育用の餌に利用できそうだと喜んでいるところなのですが、これにもキアゲハが頻繁 に飛来して、たくさんの卵を産みつけています(写真2-1.2-2)。BRHの食草園を見学して頂くと、運が良ければ目の前で産卵の様子を観察できます。


写真2-1 写真2-2

  アゲハチョウの仲間は、食草の探索は基本的に視覚で行い、前脚で葉に触れることで最終的な識別 をすると考えられています。キアゲハの食草はセリ科の草本ですので、食草探索時の雌成虫は比較的低いところを飛んでいるという印象があるのですが、結構高 い建物だと思うBRHの上空から食草園を見つけ出しているということになります。食草の探索とは別の理由で上空へ舞い上がり、たまたま植物があるのを発見 して飛来しているのか、それとも視覚以外の要因で食草の存在を感じ取って引き寄せられているのか、食草園に飛来する要因に興味をそそられます。これまで常 識的にいわれていた「視覚による探索」とは違う、未知の探索能力の存在に期待してしまいます 。



[昆虫と植物の共進化ラボ 尾崎克久]

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