研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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大学院生としてBRHに仲間入りしてから、早いもので5ヵ月が過ぎました。
『憧れのBRHで研究が出来るなんて・・・!』
と、少しミーハーな気持ち(いや、「高い志」かな?)を持って南国熊本を出てきたのですが、この5ヵ月は本当にあっという間でした。
いまでも毎日が失敗の連続だし、初めて知ることもたくさんあって、まだまだ吸収すべき事柄は山ほどあります。
そんな中、この5ヵ月で、私が劇的に変わったことがひとつあります。
私は、いも虫・毛虫等、幼虫の類が大の苦手でした。
木の葉に彼らを発見しようものなら、二度とその木には近づけないほどでした。
しかし、この春から私が所属することになったのはアゲハチョウのラボでした。
誰もが知っている通り、アゲハチョウもいも虫の幼少期を過ごします。研究をする上でいも虫との接触は避けて通れません。
昨年の秋に、このラボに配属が決まってからというもの、『幼虫になれるための特訓』と称して、いも虫や毛虫を発見しても、逃げずにしばらくみつめてみるようにしました。
最初は3mの距離から。
徐々に近づき2m。
限界の1mまで近づいて見てみても、それ以上の距離をつめる事はできませんでした。
「こんな調子ではアゲハのラボで生きて行けない・・・!」
そんな不安一杯でBRHにやってきた4月。
当時ちょうどラボにチョウがいない時期で、来るべき幼虫とのご対面の日に向けて、ラボの皆さんの協力を得て、様々な訓練をしました。
先輩の山田さんには「日本産幼虫図鑑」を見せてもらい、
ポスドクの中さんにはPCに入っている画像や、シャクガの幼虫を(遠目で)見せてもらい、
必死でした。
そして転機は訪れました。
ラボのみんなで福井までギフチョウを採りに行きました。
ギフチョウの幼虫は、紛れもない、りっぱな毛虫です。
しかし、毎日毎日観察していると、不思議なもので、毛むくじゃらの彼らが妙に可愛く見えてきたのです。
兄弟がとっても仲良しで、最初は全員一列に並んで葉っぱを食べます。一生懸命食べて、食べて、ぐんぐん大きくなります。そんな姿が可愛いと思え、毎日世話をしているうちに、いつの間にか素手で触れるまでになりました。
他にもいろいろな幼虫を育てているうちに、ほとんどの種類の幼虫に耐性を持つ事が出来ました。
今ではアゲハたちの世話をするときに撫でてみたり、話しかけてみたり、時には写メを撮ったりしています。
ラボへの配属が決まってから半年以上も不安に感じていた幼虫とのご対面。
図鑑や写真で見るよりも、実際育ててみる方がはるかに簡単でした。
私はチョウのことに関しては素人で、希少なチョウだとか、平凡なチョウだとか、そういうことはほとんどわかりません。
でも、様々な模様やかたちをした幼虫たちを見るのは楽しいです。そこに種ごとの個性が見えてくるのも楽しいです。
たった数ヶ月で、長年持っていた価値観が、こうもガラリと変わってしまうとは思いませんでした。
これからもっともっと好きになっていくのかなぁ。
幼虫ギライを克服した今、研究活動において私を阻む者はもはや何もありません。
・・・・・・さぁ、実験頑張ろうかなぁ・・・・・・!!!!!(笑)
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[昆虫と植物の共進化ラボ 宇戸口愛]
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