研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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ラボ日記を半年に一回書かせていただくようになって、四年が経ちました。そして、博士後期課程三年の秋を迎えようとしています。順調にいけばあと半年で修了です。その後、企業コミュニケーションを行っている会社に就職することになりました。そこでは、多分研究とは全く関係のない仕事をすることになります。博士号まで取って、研究者にならない、しかも研究職ですらないなんて・・と不思議に思われる事も確かに多いのですが、自分ではそこそこ満足のいく就職活動ができたと思っています。博士の就職難が叫ばれている中で、こんな道もあったよ、ということで、個人的な話ですが私の就職活動について書かせていただきます。
私は、以前ラボ日記で書かせていただいたように、生命誌研究館での生きものの研究と表現に魅力を感じて、将来は生きもののおもしろさを表現できる人になりたい、と強く(しかし漠然と・・)考えて院生になりました。そして、この四年間、常に、サイエンスコミュニケーションって何だろう、それが仕事にどう繋げられるのだろうと考え続けてきました。ぱっと思いつくところで、博物館・科学館の学芸員、出版社、科学ジャーナリスト、研究所の広報・・・他にもいろいろあるかもしれません。就職活動をするにあたって、そういうところも何カ所か志望していましたが、他にもきっと、長い目で見ればサイエンスコミュニケーションに繋がるような仕事があるはずだと、いろいろな職種をまわっていました。
そうしながら、自分のやりたい事は何なのかをじっくり考えていくうちに、ぼんやりしていたものが、だんだんはっきりしてきました。私はずっと生きものの研究をしてきたので、生きものの研究をおもしろいと思うし、サイエンスコミュニケーションは重要だと思ってきた。なので、そういう事を職業にできればいいなと思っているけれど、コミュニケーションする内容は必ずしもサイエンスでなくてもいいかもしれない。サイエンスでなくても、コミュニケーション技術はどこででも使えるはずだから、コミュニケーションを学べるような職業に就いたらいいのではないか。私が一番やりがいを感じるのは、コミュニケーションするための「もの」をつくっているときかもしれない。そうやって、少しずつ考えをまとめていきました。
面接などでは、自分のやりたいと思っていることを正直に話して、少しでもそういうことができるのかどうか、可能性を探りました。結果、私としてもとても興味のあった会社に内定を頂くことができました。企業のコミュニケーション活動全般(HPや事業報告書など)を請け負う会社なので、プロダクトがはっきりしていること、その成果が、周りまわってその企業の業績としてきちんと見えることは、サイエンスコミュニケーションとは大きく違っている点かもしれません。もちろん、会社なので利益を上げなくてはいけない分、かなりシビアな世界ですが、商品価値のあるコミュニケーションツールとはどのようなものなのか、サイエンスコミュニケーションではまだ見えてきていないことを学べるのではないかと期待しています。
これまで大学院で学んできたことは、実際にはほとんど役に立たないと思います。でも、日常的に行ってきた、文章や考えをまとめる方法や、問題提起をしてその解決法を建設的に考えることなどは、基本的な事として役に立つかもしれません。特技といえるほどではないですが、その辺りにはそこそこ自信を持って、これから頑張っていきたいと思っています。そして、何年後になるか分かりませんが、私もプロとしてのコミュニケーション技術を身につけ、いつか何らかの形でサイエンスにも関わることができたら本望だなと思っています。
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[脳の形はどうやってできるのかラボ 大学院生 山口真未]
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