研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
バックナンバー
私たち研究者は「博士号」と呼ばれる学位を持っています。基本的には大学院の博士後期課程を修了し、博士論文を書いて審査に合格すれば授与されます。ちなみに大学院博士前期課程を修了すると「修士号」が、大学を修了すると「学士号」が授与される訳です。
日本では、博士号は「○○学」を専攻したかによって学位の名称が異なります。歴史的に見ると、私の先生のさらに先生達の年代の方々は単に「○○学博士」です。私の研究分野は大きく「理学」に属しますので、私の先生の先生は「理学博士」です。次の世代、すなわち私の先生の年代になると、学位を取得した大学の名前が入って「京都大学理学博士」となりました。実は、この制度が変わる時の学生達は必死になって早く学位を取ろうと努力したようです。すなわち、それまではいわば日本国としての学位だったのが、一大学が保証する学位に「格下げ」されると考えて「価値の高い方の学位でなければ・・・」といった強迫観念があったらしいのです。でも結果は、呼称が変わっただけで価値は変わりませんでした。
今ではさらに変化して「大学名+博士」となりすぐ後に括弧付きで専攻名が入ります。ですから私なら「京都大学博士(理学)」を名乗らなければなりません。しかしこの日本語の響きは私にとってはいささか不思議で、「京都大学博士」と聞けば京大のことならなんでも知っている「物知り博士」のような印象を持ってしまうのです(食堂のどのオバチャンがご飯をたくさん盛ってくれるとか)。また、日本の大学で授与される博士号の正式な欧文表記は「Doctor of ○○」です。理学ならDoctor ofScienceとなりますし、農学ならDoctor of Agricultureとなります。しかし多くの研究者は「Ph.D.」と称します。理由は、欧米の「Ph.D.(哲学博士)」が日本で言う「博士号」に相当するからです。しかし正式には私たちはPh.D.を名乗ることはできないのです。
まあ、一々説明するのも面倒くさいし、大目に見てもらえる範囲だろうと考えて名刺の表面(日本語表記)には「理学博士」を、裏面(欧文表記)には「Ph.D.」を私は名乗っておりますが・・・経歴詐称?になるのでしょうか??
|
[脳の形はどうやってできるのかラボ 研究員 橋本主税]
|
ラボ日記最新号へ