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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【多機能ディバイス】

吉田昭広

 (すでにお話ししたことですが)チョウのハネに感覚器のたくさんあることには、たいへん驚かされました。ハネはチョウ自身の置かれている「状態」を「感じる」ことができて、それをチョウ自身のもつ「神経中枢(=脳・神経球)」に伝えているというわけです。すなわち、ハネは「情報受信・伝達装置」です。もちろん、空気の流れをつくり出す「送風装置(の一部)」でもあります。ハネの駆動力は胸の筋肉の収縮ですが、ハネには空気の流れを整える様々な巧みな工夫があるように見えます。また、光の反射をいろんなふうに調節する「光学装置」でもありますし、思いつくだけでも他にいくつかの機能が挙げられます。未知の機能がもっとあるかもしれません。そして、このハネがつくられていく「製法」もまた、たいへん巧妙なものです。
 ここで取り上げたチョウのハネの特徴については、解決すべき課題がまだまだ山積しています。

 「ラボ日記」となると、つい今使っている実験材料であるチョウのハネの話になってしまいますが、研究室ではチョウのハネからは驚かされ続けてきたし、これからもそれは続くことでしょう。驚かされるものの中には、「チョウのハネ」という「各論」にとどめておくことのできない、「普遍的」な問題も含まれていると思っています。
 チョウのハネだけでもこんな調子ですから、生き物の世界全体で今わかっていることなど、ごくわずかであるに違いありません。


[チョウのハネの形づくりラボ 研究員 吉田昭広]

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