研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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今年のサマースクールは研究部門では参加者に実験を体験してもらおうという主旨で企画された。実際に生き物に触れてもらうのがいいだろうな、と考えて、当研究室ではアゲハの産卵実験を行った。
アゲハは食草に産卵する際に、植物の葉を前脚で叩くというドラミング行動を示すのだが、アゲハの前脚の先端には感覚毛が生えていて、そこで植物の化学成分を認識している。そこで、濾紙に食草の水溶性の成分を塗りチョウに差し出すとチョウは濾紙をドラミングして食草と認識して産卵する。これを、参加者に実験してもらおうと考えた。
そうなると実験用のアゲハを揃えなければならない。ミカン食のアゲハチョウとウマノスズクサ食のアゲハチョウを揃えようと考えた。前者は普段の実験用のナミアゲハをサマースクールにあわせて羽化させればよい。後者は近所の芥川でジャコウアゲハを採ってこよう。
しかし、絶好の採集チャンスを逃してなかなか手に入れられない。代わりに木津川まで出かけていってホソオチョウを採ってきたが濾紙に産卵してくれない。なんとか前日の早朝にジャコウアゲハをゲット。これで、ほっと胸を撫で下ろした。
当日は、私の出身研究室の後輩がジャコウアゲハ持参で参加してくれて十分な量のアゲハを用意することが出来た。さらに、広島大の友人が送ってくれたシロオビアゲハが羽化してくれて4種類のアゲハを参加者に見てもらうことができた。
当研究室には中学生から高校の先生までが参加。まずは、芥川の土手で野外観察会。あれほど、入手に手こずったジャコウアゲハが飛んできて感動。羽化して間もないオスとメスを一匹ずつ採集することが出来た。そのあと、顕微鏡の下で前脚の感覚毛の観察を行った。翌日はアルコールで抽出した食草の抽出物を調製。アゲハもジャコウアゲハも食草の抽出物に反応してくれた。実験が一通りうまくいってほっとする。最後に実験の内容をポスターにまとめてもらったのだが、わずか30分の間に参加者6人の合同制作による見事なポスターが出来上がってとても感動した。
思い起こせば、小学生の頃、愛媛県立博物館で植物や昆虫の標本の作り方を教えてもらった。学校以外の場での体験型スクールはとても楽しかったし印象に残っている。今回のサマースクールでは中学生にとっては実験操作の原理なんかは難しくて分からなかったかもしれない。しかし、後々、色々なことを学ぶ過程で、今回体験したことを思い出してもらえば幸いと思っている。
無事、サマースクールが成功し、参加者にも喜んでもらえて充実した一方で、大学で助手をやっている先輩や友人の「学生実験たいへーん!」という叫び声もよく分かった。
そして次は「実験室見学ツアーの季節」がやってくる・・・
[昆虫と植物の共進化ラボ 研究員 小野 肇]
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