館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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お釈迦さまだって・・・
2017年7月3日
また定期検診の時期がきて、去年の今頃、あちこちに注意書きのついた検診表を主治医のところに持っていった時のことを思い出しました。こんな薬を飲みなさいとかこれに気をつけなさいという指示を覚悟して神妙に坐っていたら、突然、「外を見てごらんなさい。走ってるのは新車ばかりじゃないでしょう。」と言われてびっくり。でも、「おっしゃる通り。先生いいこと言って下さる」とやけに納得して、以来「ポンコツ車」に徹し、周囲にもそう言って暮らしてきました。
ところで今年は、去年と同じ、いやところどころ去年より悪いぞと思う表です。注意書きたくさんです。今度こそ何か言われるぞと覚悟していましたら、「年相応、どちらかと言えば立派なものだ」とおっしゃるのです。「去年ポンコツとおっしゃられて」と申し上げると「そりゃ、そうです」と動じません。実は検診の時に去年より血圧が少し高かったので、「血圧計持っていますか」と聞かれました。「ハイ持っています。最近また新しいのをいただいて」と答えたのですが、「測っていますか」の問いには「いいえ」です。「持ってるだけじゃしかたないでしょう」当然ですね。その話をしましたら、先生大声で笑って「のんびりしてていいですね。でも測って下さいね」とのこと(実は、まだ測っていません)。
誰の中でも一年づつ年はたっていくのですが、分母が大きくなると確実に時のたつのは早くなりますし、壊れ方も早いと実感します。ところで、たまたま読んでいた本にお釈迦さまの言葉がありました。「わたしはもう老い朽ち、齢をかさね老衰し、人生の旅路を通り過ぎ、老齢に達した。わが齢は八十となった。例えば古ぼけた車が革紐の助けによってやっと動いて行くように、恐らくわたしの身体も革紐の助けによってもっているのだ。」(『ブッダ最後の旅』)お釈迦さまもポンコツだったんだと安心し、またのんびりの方へと一歩歩み出しています。