館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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威丈高にいう嘘
2017年6月15日
先回言葉の大切さについて書きました。国会は、私たちの代表が話し合いをし、国のありようを決めていく場ですから、お手本になるような言葉が使われるところでなければ困ります。よい言葉は美辞麗句ではありません。適確で、正しい言葉を聞かせて欲しいですし、嘘は許されません。嘘をついてはいけない。子どもの頃に家の中にあったいくつかの約束事の一番がそれでした。
小学生の時です。「ハンカチ持ちましたか」。早く学校へ行きたかったので、いい加減に「ハーイ」と言って出て行こうとしたら衿足をつかまれました。忘れて置いてあるから聞いてくれたのに。確かめもせずにごまかそうとしたというので叱られ、授業にはギリギリ間に合いましたが楽しみにしていた朝の遊びはフイになりました。その後も、ごまかしの嘘をつくと結局どんどん深みにはまり、どうにもならなくなるという体験をして、子どもなりに嘘はダメと学んだものです。
もっとも、大人になるとかけ引きが必要と言われます。嘘も方便です。私はこれが苦手です。思ったことをそのまま言い、そのまま行動する。もちろん、迷惑をかけたり勝手をしたりしてはいけないことはわかりますが、最近流行の忖度は苦手です。相手が何を求めているか、何を考えているかはわかっても納得が行かなければ合わせるわけにはいかないと思ってしまいます。こういう人があまり波風を立てずに生きようとしたら、権力からなるべく遠くにいることです。あるものをないなんてとんでもない。こんなのあたりまえと思うのですが、嘘を平気で言うだけでなく、威丈高に言うのが流行しているみたいで困ったものです。子どもになんと説明したらよいのでしょう。