館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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現役バリバリの中に入って
2015年4月1日
先週の日曜日、自然科学研究機構シンポジウムに参加しました。「生き物たちの驚きの能力に迫る」というテーマでの会です。環境で性がきまるミジンコ、サンゴと褐虫藻の関係、干からびても蘇るネムリユスリカ、ショウジョウバエを用いた生殖細胞の不死、モルフォチョウの翅をまねた物づくり、花と虫の共進化と続く多様で興味深い話を聞いた後、「小さな生きものたちが紡ぐ大きな物語 ー 普遍と多様をつなぐ」という生命誌の話をしました。
現役バリバリの研究者の中に入って生命誌の話をする時代が来たということです。多様な生きものの中から特徴ある現象を見出し、そこに眼を向けた研究を面白いと思う研究者が現れ、しかもそこから生き物の本質を考えさせる成果が出てくる。こんな時代が来るとは思ってもいませんでした・・・というとウソになります。そうならなければ生き物研究は本質に近づけないと考えたからこそ、生命誌を始めたのですから。でも実際に、モデル生物にこだわらずに個別の生き物を知ることから生命全般について考えたい、更には自然を考えたいという40代、50代の研究者の中に入って一緒に語り合っての実感は、"ああよかった"でした。これからが楽しみです。
一日中居眠りをする暇もなく研究の話を楽しんだ後の疲れは心地よいものでした。