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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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おかげと言われると面映ゆいのですが

2015年3月16日

画廊を経営しているお友達から展覧会に行こうとのお誘いの電話がかかってきました。とても明るい声で。

三年ほど前だったでしょうか。彼女からガンが見つかったと聞かされました。そして、自分の生き方としては、このまま何もしないで静かに暮らしたいと言うのです。がん研究は進んでいること、各人のガン細胞を調べ、適切な薬や療法を選べるようになっていること・・・その時私がいっしょうけんめい話したらしい・・・実はあまり覚えていないのですが、それで治療を受ける気になり元気になったのだと彼女が言うので、どうもそのようです。何もしていないのに桂子先生(年下の友人にはこう呼ばれることが多く、いちいち訂正するのも面倒なので、先生でもないのに先生になっています)のおかげと言われると面映ゆいのですが、とにかく元気になったのですから本当に嬉しいことです。

生物学と医学が協同してのガン研究が本格的に始まってから45年。それがゲノム研究へとつながってから25年。まだ、ガンが分かったとは言えませんが、でもどのような病気と考えたらよいかは見えてきています。米国でのガン研究のリーダーが適確な構想を示してきたことが研究の大きな流れを作ったように思います。生きていることを知るのは本当に難しく、調べれば調べるほど複雑さが見えてくるのが悩ましいのですが、でもどこかで、ほんの少しでも、誰かがよく生きることにつながるのは嬉しいと考えて仕事をしていこうと改めて思いました。

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