館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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〈▽・□・○〉
2014年5月1日
このところ生命誌の絵巻、新絵巻、マンダラを並べて見ながら考えることが続きました。新幹線の中で考える時は、メモ用紙に略図を描きます。ちょっと乱暴に描くと▽、□、○。見ているうちに思い出してしまいました。そうです。かの有名な仙厓和尚の絵です。
臨済宗の僧侶ですが、絵を描き始めたのは60歳過ぎ。本来とても上手で花鳥画、山水画などをみごとに描いたのだそうですが有名なのは、禅についてユーモアたっぷりに描いた絵。○は禅では悟りの象徴とされますが、仙厓は○を描いて"これ食ふて茶のめ"と賛を書いています。お饅頭にしてしまうわけです。その和尚さんが描いた□・△・○。賛がないので多くの人がああだこうだと解釈しています。世の中の形はすべてこの三つで表わせるので世界を表わすとか、左から□、△、○の順に見て最初は角があってもだんだんそれがとれてすべて丸くなるということかとか(右から描いていると思うのですが)。
そんなことを考えているところへ、今日、金沢の鈴木大拙館から「大拙つれづれ草」展のお知らせがきました(木村宣彰館長さんが生命誌を応援して下さっています)。
その中に大拙の不異○(色不異空)の書がありました。仙厓を面白いと思って書いたもので、大拙は「○△□」を英文で解説する時には「The Universe(宇宙)」という題をつけているとの説明がついていました。
宇宙の宇は四方の果て、宙は無限の時間、つまり広い空間と長い時間です。なるほど▽・□・○、つまり絵巻・新絵巻・マンダラは宇宙なのだ。そうきめました。仙厓和尚は、○はガンモドキ、△はコンニャク、□は焼豆腐。おでんだよと笑うかもしれませんけれど。