館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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意外なことからあれこれ考えて
2013年11月1日
最近のニュースでヘエーッと思ったのは、「パリジェンヌにズボンの着用公式に認められる」という話です。1800年に「外見に関する法」が制定され、パリの女性がスカートでなくズボンを着用する場合は警察の特別許可が必要となったというのです。もっとも、100年ほど前に自転車と馬に乗る時はよいとなったそうですが、法律はそのままだったようです。それが今も有効だった・・・実際には、お洒落なパンツ・スーツ姿の女性は街を歩いていますから、外から見たら少しもわかりませんでしたが、フランス女性としては大きな問題ですよね。そこでナジャット・ヴァロ=ベルカセム女性権利大臣の下で法律廃止が承認されたというのです。大臣のコメントによると「女性が男性と同じ服装でオフィスに出勤したりしないようにすることで女性の社会進出を妨げようとしたのがこの法律の狙い」だったとのこと。実質は伴わないとはいえ、そんな法律が残っていたとは意外です。
インターネットに1930年代にマレーネ・ディートリッヒとキャサリン・ヘップバーンがズボンをはいてみせたとあり、そういえばこの二人かっこよかったなあと思った次第です。
この記事はまた、フランスには女性権利大臣という役があるのだということを教えてくれました。それにズボンという言葉もちょっとなつかしいです。考えてみたらズボンはフランス語の「jupon」から来ているわけですから、パリジェンヌについて語る時はズボンなのでしょう。でも、本来フランス語のjuponの意味は「ペチコート」だというのですから複雑です。今は英語化してパンツ・スーツと言いますが、半ズボンはやはり半ズボンだなあなどと言葉の使い方の移り変わりも思いました(若い方は短パンかな)。法律・世相・言葉・・・社会の変化を考えさせられたズボン騒動でした。
女性の社会進出のこと、パリの場合実状にはあまり影響がありませんからヘエーッですませられますが、女子教育を禁止するタリバンと闘うパキスタンの14歳の少女マララさんの話は深刻ですね。ここまでひどくなくてもまだまだ女の子には教育はいらないと考える社会は少なくありません。10月30日に出された「世界人口白書2013」は「母親になる少女」というテーマで、18歳未満での妊娠が2万人/日あり、それを変えるのは教育だとあります。教育の普及で少女の妊娠率は下がるのです。教育への貢献をすれば、日本は本当の意味の積極的平和を求める国になるのだと思うのですが。