館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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持続可能な成長
2013年7月16日
言葉ってふしぎだなあと思います。最近よく言われるのが「持続可能な成長」、その意味は「続けることのできる成長」であり、成長し続けることが大事ですということになっています。最初この言葉、つまり「Sustainable Development」が使われた時には、「私たち人間は自然の一部なのだからそれを破壊してしまっては自分自身が生きていけなくなる。私たちが生き続けようとするなら開発も成長も環境を維持しながら続けるのでなければいけない」という意味でした。OEDで引くとsustainの最後にsustainableという文字はあっても用例なし。あまり使われてきた言葉ではないのかなと思います。一方、電子辞書の英和を引くと、「支持できる、維持できる」の後に「環境を破壊しない(にやさしい)、持続可能な」とあり、恐らくこれは最近加えられたものでしょう。いずれにしても、「どこまでも成長し続ける」ことを求めるのは無理、目先で株価が上がるというようなことでごまかしてもダメです。
先日も、これからの科学技術を考えるために立派な方たちが集まって議論していらっしゃる会合で生命誌のお話をしましたら、「科学技術は社会を便利にするためにあるものときまっているのだから」と決めつけられて、なんとナイーブなとびっくりしました。
もう少していねいに考えませんかと思いますが、国を動かす方たちは面倒なことはお嫌いみたいですね。