館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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貧乏が貧困になって
2013年8月1日
土用の丑の日。今年はウナギが絶滅危惧種になるということが話題になり、却って普段あまり気にしない方までが、食べなければと思ったかもしれません。我が家は全員が揃いませんでしたので、ちょっと延期。次のお休みの日にしようかしらと思っています。ウナギのことなら季刊生命誌68号のサイエンティスト・ライブラリーで塚本勝巳先生が思いのたけを語っていらっしゃいますので、是非お読み下さい。ウナギの故郷を追う探偵団です。完全養殖につながる頼もしい研究でもあります。
ところで、新聞に「なすの浦焼」が紹介されていてとても美味しそうでした。長なすを焼いて皮をむき、薄切りにしてそれにタレを塗ります。次の仕上げがユニーク。1800℃のバーナーで焼け目をつけているところが写真に載っていました。実はこのアイデアを出したのが建設会社の社長さんだそうで、従ってバーナーとなったのでしょう。焦げ目のついた細長いナスがよい照りでお重に並んでいる様子は一度やってみたい気持をそそります。バーナーでなくともなんとかできるでしょう。
ここで家人が、「長屋の花見」だねと言ったものですから、ベッドの枕元に置いてある落語全集を手にしたら、もうおかしくておかしくて、ケラケラ笑い通しでした。本を読んでこんなに笑ったのは久しぶり。話の中味はわかっているのにこれだけ笑わせる力に改めて驚きました。こういうのが本物なんですね。次いでながら直前の参院選での候補者の話の魅力のなさ、あまり本物とは言えないということだったのでしょう。「お酒は甘口かい、辛口かい」と聞かれ「渋口で」。蒲ぼこも玉子焼も歯ごたえがあります。貧乏でも楽しいのです。最近は貧乏でなく貧困になってしまって辛い話ばかりですが、貧乏はそんなものどこ吹く風、どこか心にゆとりがあって明るいのです。『貧困大国アメリカ』(堤未果)に、小泉・安倍路線は日本にも貧困への道を作っているとありました。そうなんだろうと思います。「なすの蒲焼」はまさに明るく楽しいところが傑作です。