館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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【超高層ビル群が好きになれないわけ】
2011.7.15
そこで、生命誌からの発想の具体を一つ。今朝のことです。電車が新宿駅に近づくにつれて超高層ビル群が見えてきました。いつものことですが、なぜかこの景色が好きになれません。そして今朝、ふとその理由を思いつきました。日本で暮らしてきた私にとっての自然の象徴は、樹であり緑です。3階建て、つまり10mほどの建物ですと、周囲に樹を植えれば、しばらくすると建物はその中に入り込み、一つの風景になります。東京でも、住居区域は建物の高さを10m以下としているのはそのためでしょう。でも商業地域、オフィス街では樹と一体になった風景を求めるのは難しく、高層ビルになるわけです。でもそれが樹木とまったく無関係になり、そびえ立つようになったら、自然の中に暮らすという感覚は失なわれるでしょう。近くに森林公園を作り、それと調和する風景を考えたら10階建て、30mくらいでしょうか。古くからあるビルはこんな感じです。それは高層ビルを建設する技術がなかったからであり、今や新しい技術が開発され1000mにも挑戦できる時代になっているんだよと言われるでしょう。でも、ビルは建てるためにあるのではなく、暮らすためにあるのですから、そちらから考えたら、決して超高層は望ましいものではないと思うのです。東京の地価を考えなさい、人口を考えなさいと言われるでしょうが、それも、なぜ一極集中しなければいけないのかというところから考え直せるのではないでしょうか。 自然の一部として生きるということを考えていると、この方向になります。エネルギーだけを自然・再生にするというのでなく全体を考える時が来ていると思うのです。 【中村桂子】 ※「ちょっと一言」へのご希望や意見等は、こちらまでお寄せ下さい。 |