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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【どうしちゃったの〜】

2009.11.16 

中村桂子館長
 スゴーイ!さすが松井秀喜。正直言っていつも大リーグの野球を観ているわけではありませんが、こういうことが起きると突如ミーハーになります。ニューヨークの街をパレードする様子を伝えるテレビに見入って、堂々としてカッコイイと嬉しくなるのです。それにしても、今期の松井の様子から見て、得点7点のうち6点を叩き出し、MVPになるなどとは思ってもいなかったことです。熱心な野球ファンではない私のびっくりは大した意味はありませんが、解説者の言葉からも思いがけなさが感じられました。どうしちゃったの。もちろんよい方への意外性ですから嬉しいこと・・・こうして突如生れてくるミーハー気分が高まるわけです。専門家が見ればなぜこれができたかの説明はあるのでしょうが、しろうととしては、どうしちゃったの〜と思っている方が楽しいので、面倒なことは抜きです。実は、生きもののことをお話する時に話題にするのがこの “思いがけなさ” です。機械と生きものの違いを見た時、機械は、「その構造がすべてわかっていて、思い通りに動いてくれるもの」であるのに対して、生きものは小さなアリのことさえまだ何もわかっていませんし、なかなか思い通りにはなりません。毎週新幹線に安心して乗り、自由な時間を楽しめるのは(実はこれも新幹線の中で書いています)、機械は思い通りに動くと信じているからです。
 生きものはそうはいきません。今年、お隣の柿はみごとになり、オレンジ色の実に夕日があたってきれいなのに、家の方は葉っぱばかり。何かが悪いんでしょうねと落ちこみながら・・・今度のオープンガーデンの時に果樹に詳しい方に聞いてみようと思っています。
 でも、思い通りにならないということは、思いがけないことが起きるということでもあります。膝は大丈夫なのかしらと思っていたら、驚くような活躍。これがあるから生きものはいいんだよと思います。
 来年はなかなか思い通りにならない阪神がどうしちゃったの〜をやってくれるとよいのですが。

P.S. 自殺が年間30,000人を越す状況が続いている中、その報道に携わったことが契機となってNHKを退職し、ライフリンクというNPOを始め、活動している清水康之さん。彼が政府内に「自殺対策緊急戦略チーム」ができたことを報告して下さいました。そこに、その日のNHKのニュースは松井のMVPを11分間も流してこのニュースはきちんと取り扱ってくれなかったという指摘があり、ちょっと複雑な気持になりました。


 【中村桂子】


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