館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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偏差値とやらいうものを使って、人間を一つのものさしで測れば一列に並べられるかのように思っている人にはこう言うことにしています。「生物学は、地球上の全生物はDNAという一つのものさしを使って比べられることを見出しました。すべて分析して比較できるのですから、これほどみごとなものさしはないと言ってもよいでしょう。ところで、そうやって比べてみると生物はDNAという一つのものを持ちながらいかに多様化したかということがわかってくるのです。アリはアリとしてみごとな生き方をし、ライオンはライオンとしての能力をもつ。この二つを比べてどちらが優れているかを語っても無意味だということです。進化という現象は一直線上を優れたものへと進んでいくかのように誤解されてきたきらいがあります。実は複雑化、多様化への道なのであって優劣とは関係ないという見方が、そろそろ定着してもよいのではないでしょうか。これは人間同士にもあてはまるわけで、DNAを調べれば多様性はわかりますが、一列に並ぶような比較ができるわけではありません。なんだか近頃DNAで人間がきまり、優劣を比べられるような話が出ていますが、DNAの面白さは、これでいかに多様性が出せるかというところにあるわけで、生命誌はそれを基本に、生きものとは、人間とはという問いについて考えているのです。」そして、「アインシュタインとピカソを比べてどちらが優れているかなんて考えてもしかたがない。20世紀初めにこの二人の天才が生まれたおかげで、科学も芸術も新しい展開をしたことの面白さを語るのは楽しいけれど」とつけ加えることにしています。
なんとなくこんな風に二人を例にあげていたら、まさにこの二人を並べて比べた本が出ました。著者はイギリスの科学史家アーサー・ミラー。題名はズバリ「アインシュタインとピカソ」。二人を結ぶものがあるのです。何が書いてあったか、どこが面白かったか。このホームページのサロン「コラムの庭」に「時間」というところがあり、そこに書きました。是非のぞいて下さい(と言ってもそこがコンピュータの世界の面倒なところで私が好きでないところなのですが、「コラムの庭」の方のアップはちょっとずれることになるかもしれません。サロンには他にも面白い話がありますので、アップまでそれをお楽しみ下さい。そしてサロンへの書きこみもお願いします)。
【中村桂子】
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