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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【もつれた糸をほどくには−1】

2001.12.1 

なんだか毛糸がもつれてしまったような世の中になりました。どこをどうほぐしていったらよいのか。ほどくきっかけになる端はどこにあるのかさえもわかりません。
子どもの頃、こんがらがった糸をほどくのが得意でした。戦時中のこと、小さくなったセーターをほどいて時には染め直し、新しいセーターにするのは、年中行事でした。小学生の頃は、編む方には参加できないので、もっぱらほどく係です。ほどいた毛糸を少しずつ巻いていけばよいのですが、少し能率良くやろうと糸を山に積んで、ある程度たまったら巻きとろうと考える。子どもでも仕事の効率は考えるものです。ところが、これが間違いのもとになる場合があります。なぜか山に積んだ糸がこんがらかってしまうことがあるのです。こうなったら効率も何もありません。ゆっくりほぐすほかない。この時のコツは焦って全部をどうしようなどと思わないこと、小さなところを少しずつ丁寧にほぐしていくのです。もちろんこれは仕事としては失敗で、時間のロスなのですが、なぜかこれが嫌いじゃない。ある時など途中で停電になり(あの頃はよく停電しました)、ろうそくのあかりでやっていて母にたしなめられました。少しずつ丁寧にほぐしていくとだんだん真直の糸がふえていき、ある時すーっと全体がほどけてくる時が嬉しいのです。
ところで今の世の中、このようにほどけるかどうかさえわかりませんが、コツは同じだと思うのです。自由、平等、博愛、人権、平和…などなど、どれも大事なことはわかっており、こんがらかった状態でこれらがないがしろにされているのですが、これを唱えたら魔法のようにもつれがほどけるというものではないでしょう。小さなところを少しずつほぐしていく。その中で私にできることは何だろう。そう考えた時、平凡ですが、やっぱり大事なのは社会を構成する人だと思いました。それも大人はすでにもつれの中に入りこんでいるのでほどきにくい。中学生から高校生くらいのこれからどんな大人になろうかと考えている人が大事だと思い始めています。私はどうも教育という言葉が苦手なのですが、できるだけ10代の人と話し合ってみようと思い始めました。そこでの体験は次回に。


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