館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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【季刊「生命誌」の衣替え(2)】
2000.12.1
生命誌という切り口はさまざまな事柄と " 切り結ぶ " ところがあるという実感がますます強くなっています。" 切り結ぶ "は、最近読んだE.Sリード著「アフォーダンスの心理学−生態心理学への道」(原題はEnocountering the World : Toward an Ecological Psychology)で " enocounter " の訳として使われていた言葉です。通常は " 出会い " とでも言うのでしょうが、確かにこの場合 " 出会い " では少し軽すぎます。切り結ぶと言うと、ちょっとした緊張が感じられるなと思い、拝借しました。余談ですがリードの生態心理学は、まさにあるがままの生きものを見ようとするもので、心理学の生命誌だなと思い、生態心理学より「自然誌心理学」という方が合っているように思いました。進化も大きく関わり、historyとかstoryが大事な概念として入っているので。 生命誌も環境との関わりの中で自然界の生きものを見ていくので、アフォーダンスという言葉は使っていませんがリードの心理学と重なっているところが多いと感じています。これからの展開の中で関わりが生きてくるかもしれないと思っています。 ところで、本題に戻りますと、これまでの雑誌は、どのページも生命誌とさまざまな事柄との切り結びを意識してはいたのですが、全体としてのメッセージ性が不足していたような気がして、生命誌はどんなところと切り結んでいるかを整理してみようと考えて話し合いをしたわけです。 今のところ次のような図で考えています。
まだまったく練れていませんが、これまで不足していた日常生活に眼を向けるという部分を入れたことが一つ。更にここにあげた4つの相互関係にも眼を向けたいと思っています。たとえば左側の科学と右側の生活や技術は深い関係がありますし、左側の科学が明らかにした生命像を基礎にして下側の部分に書いた思想(哲学)の部分に新しいものが生まれるとよいと思っています。 是非御意見をお寄せ下さい。 |