館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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最新の季刊誌「生命誌」では縄文時代の人々の暮らし、とくに何を食べていたかを扱いました。ちょっと今までと違った話題を扱った理由の一つは、このような分野にも生物研究で用いられているDNA分析や安定同位体分析が使われるようになり、新しい事実が明らかになっているので、ついのぞいてみたくなったということです。青森県三内丸山遺跡のクリのDNA分析をしたところ皆同じ、つまりクローンと出たので、クリを栽培していたという考え方が出されています。もう一つの理由は人間への関心です。生物研究はヒトまでを対象にしますが、そこに止まらずやはり人間についても知りたいという気持が出てきます。そこで最も身近であり、しかも最近研究の進んでいる縄文人を知りたいと思ったのです。ヒトは生きものの一種としての呼び名、人間は文化を持った存在で、洋服を着て時計をはめてコンピュータを操作している姿をさします。ヒトと人間の関係・・・ここには脳、言葉など興味深いけれど、まだ未知のテーマがあります。ここをどうやって解いていくのか、生命誌の一つの課題であり、今、考えています。よいお考えがありましたら教えて下さい。実は先月私も三内丸山を訪れてきましたので、その時の感想を次回に。
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